ブラコン:長編
□兄弟
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『あ、傘忘れた・・・』
窓の奥にはパラパラと小ぶりの雨が・・・と、思ったのも束の間一気に降水量が増した。
見る見るうちに水たまりが出来上がる。
ーー・・・どうしよう。
迷ったあげく名前は携帯を取り出し自宅に電話した。
***
「うん、分かった・・・それじゃあ・・・」
琉生はガシャンと受話器を置く。
「名前何だって?」琉生が玄関へ向かおうとすると、梓がそれを止める。
「名前・・・傘忘れたんだって・・・だから届けに行って来るね」
琉生はそう言い終えると再び玄関へー・・・。
「まった!!!」
次に琉生を止めたのは梓ではなく椿であった。
「俺が行く!!!」
「・・・いきなりどうしたのさ椿・・・」梓は呆れたように椿を見る。
またどうせ変な事でも考えているのだろう・・・。
「俺と名前が相合傘すんの!!!」
そうと決めたら実行!ダダッと椿は玄関へ向かう。
しかし、要が椿の腕を掴む。
「そういう事なら俺が行くよ」
「はぁ!?何で!!」
「つばちゃんにそんな美味しい展開譲れないよ」
「うるさい!!つーか琉生!どさくさに紛れて靴履くな!!」
キッと椿は要から琉生に睨み付ける。
「元々は・・・僕が頼まれた・・・」と琉生はマイペースに靴を履く。
「「抜け駆け禁止!!!!」」椿と要がハモる。
「琉生兄一緒に行くよ」
ちゃっかりと風斗は着替えを済ませ、要と椿を横切る。
二人を通り過ぎようとした時、要と椿の腕が風斗の首根っこを掴む。
掴まれた風斗は「うえっ」とアイドルらしからぬ声を上げる。
「琉生ならまだしも、お前みたいなエロガキに名前の所には行かせねぇ」
「俺もつばちゃんと同意見だよ、ふーちゃんは珍しくお仕事が休みなんだからゆっくり休んでてな」
「離してよ!つーかあんたらだっていつも姉さんにやらしーことしてんじゃん」
シャーと蛇が睨み合うようにバチバチと火花を散らしてる間に祈織が琉生に近づく。
「琉生兄さん僕も行くよ、兄さん名前姉さんの学校分からないでしょ?」
「あ、そういえば・・・じゃあ祈織くんも行こ・・・」
「うん、じゃあ早く行こうか・・・」まるでプロの詐欺師のような言葉遣いで祈織は同行が許された。
そして、祈織が扉を開けようとした途端。
ガチャリと扉が開く。
祈織は勿論、後ろに居る琉生。ギャーギャーと喚く椿達も扉を見つめる。
「おや?どうかしたんですか」
目に映ったのは朝日奈家の次男、右京であった。
その後ろには名前の姿が。
「なんで・・・右京兄さんと名前が?」その場に居る全員が疑問に思っている事を琉生が代弁する。
ジッと嫉妬も混じった兄弟たちの目が右京に向けられる。
「仕事の帰りにたまたま名前さんの学校を通りましてね・・・その時に」
ね?と確かめるように右京は名前に視線を移す。
『はい、本当に助かりました』ニコリと右京に微笑む名前。
「いえいえ、にしても玄関に溜まりすぎでしょ・・・早く退きなさい」
要は頭を抱え。
椿はムッと不満そうに頬を膨らませ。
風斗は舌打ちし。
祈織は眉をピクリと動かし。
琉生は少し残念そうにションボリする。
いままでの口論は何だったのかー・・・。
誰しもが思った。
ブチッと全員の何かが切れた。
「右京兄さんだけ・・・ズルイ・・・」
「はぁ・・・まさかの敵だよ・・・右京兄・・・」
「・・・あんたらが早く離してくれたら。」
「・・・名前姉さん、冷えてるでしょ?何か飲む?」
「冷えてるんだったら俺と風呂入ろう!!!」
『え?え?』
「名前さん、そろそろ無視して良いですよ」
暗雲Umbrella
***
さきさんからのリクエスト 13.8.25
end.