黒子のバスケ:長編

□足音を迎えに行く
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『ふぅ…』



名前は盛大にため息をついた。
はぁ…遅刻するとか…私のバカ…。


「どうかしましたか?名前さん?」



『うおっ!?黒子くん?いつの間に…』






いつから居たのか、目の前に黒子くんが立っていた。
そんな反応されると悲しいです、と黒子くんは視線を下にやる。




『ご、ごめんね!…ボッーとしてて…』



「いえ、冗談ですよ」


『…』


「すみません、貴女を見ると何だか虐めたくなっちゃうんです」


『…意外な性格だね』


「よく言われます。それで、ため息なんてついてどうかしたんですか…?」



『今日ちょっとバイトに遅刻しちゃってね…』


「あぁ…それは仕方ないですね…」






次回から気をつければ良いですよ、と黒子くんは優しく慰めてくれた。
うん、やっぱり癒し…!
少しブラックな一面もあるけど癒し…!





『あっ!そうそう!黒子くんって31日空いてたりする?』


「31日ですか…?」


『うん!家でパーティーしようかと…』






31日ー…、黒子くんは徐(おもむろ)に手帳を出しペラペラとページを捲る。




「あ、ヒマなのでお邪魔させてもらっても?」



『おぉ!良かったぁ!』






万歳!と私は両手を上げる。
うわーい!お客さんゲット!
後で高尾くんと氷室さんに報告しないと。







「おい、お前バイト中なんだろ。うっせーぞ」







荒っぽい口調、しかしその中には優しさも篭っている声音ー…。





『青峰くん!』



「青峰くん、お久しぶりです…」




驚いた、と名前は目を見開く。
しかし正面に立つ黒子は正反対に、落ち着いた様子で青峰に挨拶を交わす。

「おう、久しぶりだな。つーかテツ、こんなちんちくりんな女相手してると頭馬鹿になんぞ」


「いえ、名前さんとのお話は面白いので…」


「お前も物好きだな」





青峰は耳をほじくりながら黒子を見下ろす。

黒子くんは何も言わず、静かに青峰くんの脇にビシッと手刀を入れる。
青峰くんはふごっと奇妙な声を出し脇を抑え、黒子くんを睨む。




ナイス黒子くん!






「テツてめぇ…」


「イラッときてしまい…申し訳ありません…」


「おっまえ…」





すみません、と淡々と言葉を返す黒子くん。
青峰くんは一切視線を外さずジッーと黒子くんを見る。
やっぱりこの二人は仲が良いんだ。流石元コンビ。





『ねぇ、青峰くんお取り込み中悪いんですけど…ちょっと良い?』


「あ?何だ?」


『あのね、さっき黒子くんも誘ったんだけどね。31日時間あったりする?』


「31日?」


『うん、私の家で年越しパーティー的なことを…』


「…んー…」


「きっと食べ放題ですよ」


「行く」


『…』








黒子くんの一言に即答する青峰くんに私は何も言えなかった。
結局食べ物か…。















(あ!今吉さんも誘ってもらえる?)
(はぁ?あの人も呼ぶのかよ)
(そー言わずに!ね?)
(はぁ…言うだけ言っといてやる)















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