長編

□參
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 昨日友人となったばかりの彼女――中禅寺記紀について。

 入学式は見学だった彼女、中学時代まででなく未だに病弱――と云うか虚弱――らしく、病院に検査を受けに行く事が偶に有るそうだ。何でも、体育は殆ど見学するしかないとのこと。運動部の私には想像がつかない話だ。

 かなりの和風趣味で、制服――ワイシャツ・ネクタイ・スカート――の上に、羽織りを着て来ると(昨日)宣言していた。式典以外ではブレザーでなくても善いとはいえ、早過ぎると思ったり。髪留めも簪だ。
 私も家では、和装の事があるので、親近感が湧いた。高校生って単純だ。

 そして何よりその知識だ。民俗学や古典文学、心理学、宗教に法学、オカルティズムなどにも精通していて、しかもきっちりと秩序づけて記憶しているようだ。¨博覧強記¨¨該博¨とは彼女のことだろう。
 覚えるだけなら、できる人はよくいるが、その大量の情報をあそこまで正確に分類・連結できる人はそうそういない――立海には居たが。
 特に彼女の話は、怪談絡みの話が面白い。恐怖譚としてか民俗譚としてかの違いを越えて――私に越えさせて――楽しいのだ。…複雑難解で気が抜けないが。

 詰まり。
 私の高校生生活のスタートは――英明にして閨秀なる友人を手に入れた事から始まった、とも云えるのだ。
 え、堀竹?知らんそんな奴。

 滝先輩のアドヴァイスにも沿えたし。
 快調な滑り出しだ。
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