短編

□火村英生成り代わり
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 私の人生は暗澹たるものだった。
 ただでさえデキの悪い娘、何やっても空回り、やることなすこと裏目に出る。てめえのオツムの悪さを恨み、生まれ変わったらきっと頭のキレのいい賢い人間になってやるゾ……とかウダウダ考える毎日だった。
 そして間も無く夭折。周りが嘲り安堵するのが微かに見え、嗚呼漸く役に立てたのだな……なんて考える始末。全く、馬鹿程手に負えないモノはいない。

 しかし、気が付けばオンギャァアーと泣き喚く自分がいた。何が何だか解らぬままにアレヨアレヨと流されに流されて、ベビー用品に囲まれて初めて私の立場を自覚した。ーー生まれ変わっとった。

 やり直せる……とばかりに挑戦しまくる毎日。尚良い事に、今度の私の頭脳は相当にデキるのだ。気付いた時には狂喜乱舞、手の舞足の踏み場知らず、親の転勤に伴う引越しを重ねつつ、有効活用しまくった。

 ーーだがしかし、私は失敗した。

 私は人間を、…思い上がった自身を呪った。……ヒトヲコロソウと思った自分を見て、絶望した。……あの頃でも、そんなこと考えなかったのに。

 許さない。赦さない。ユルサナイ!

 もうシアワセを追い求めるなんてとんでもない、只々贖罪に日々を費やすのみ。
 私が出来る贖罪は?折角の頭脳を活用出来る贖罪は?

 ーーそして私は、家族を振り切って家を出て、京都へやって来た。
 この頭脳を活かして学者になり、そしてーー
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