ショート

□きっかけバスルーム
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「総悟、」

「勘弁してくだせぇ。俺ぁご高齢のアンタと違って思春期ですぜぃ。」

「山崎、」

「さ、さすがにそれは・・・いや、俺は思春期はとっくに通り過ぎましたけど、大人の理性にも限界ってものが」

「・・・原田、」

「映画ならいいんですけどねぇ。他の奴らの恨み買いたくねぇんすよぉ。」

「近藤さん、は、」

「出張です。」

もう馬鹿。お前ら本当に馬鹿。なんで全員ダメなんだよ馬鹿。
土方はじりじりとせり上がる痛みに少し頬を膨らませた。どこかで写メを取る音が聞こえてきた。沖田の仕業だった。






はい万事屋です、と若い少年の声が室内に響く。
やる気のない上司は従業員の十代の少年に電話番を任せて、しっかりとパチスロへ旅立ってしまったその二時間後の事だった。
金も少ないから、どうせすぐに帰ってくるだろうということは分かっている。
その間に部屋の掃除を済ませておけばいいかと、新八は先ほど遊びに出て行ってしまった神楽を見送り、留守番の役目を担った。
やっと掃除機で室内を全体掃除したくらいに、滅多にならない万事屋の電話が鳴り響いた。
まさか仕事か?新八はツーコール目でパッと受話器を取った。
すると聞こえてきた声に、新八は思わず「えっ、」と言葉を一瞬無くしてしまった。

『すまねぇ、万事屋はいるか?』

「ひ、ひじかたさん!?」

電話越しに聞こえてきたのは、心地よい低音。
聞きようによってはぶっきらぼうなその声に、新八はスッと背筋を伸ばした。
真選組副長の土方。幕府の中の組織でもかなり若手のエリートとして有名な彼とは、なぜだか親交がある。
親交と呼べるほどいい物ではないとは思うのだが、それでもさまざまな事件にこちらも介入してきたから、関係としては浅いとは言い切れない。
しかし彼から進んで万事屋を利用するなんてことは滅多にない。
なので対応の声が若干裏返ってしまったんじゃないか、と新八は自分の話し声に焦ってしまった。
万事屋は、ということで、銀時に用事なのだろう。
新八は少々緊張しながらも、今は外出中だということを告げた。しかしまぁそろそろ帰ってくるのではないか。
そしてその新八の読みは正しく、土方が「かけ直そうか」と言おうとしたところで、背後から「ただいま〜っと。」という抑揚のない声が聞こえてきた。

「あ、今帰ってきたんでちょっと待って下さいね。・・・銀さん!土方さんから電話です!」

「は?土方?なんで?」

わざわざ自分のところに?と銀時も不思議そうにしながらも、とりあえず受話器を受け取った。

「はーい変わりました。何の用だよ。」

『・・・電話で依頼は受け付けてないのか?』

「は?依頼?」

まさかの電話内容に、銀時は持っていた本日の戦利品である板チョコ数枚の入った袋を机に置いた。
普段からあまり親しくもない者から電話で、そして自分の職業を考えれば、万事屋への依頼なのだということをすぐに気づけばよかったのに。
まったく考えが至らなくて、せっかく仕事がいただけそうな電話に怪訝そうな声で返答しかけてしまった。
で、その依頼ってのは?
銀時はとりあえず内容を伺おうと促した。
すると電話越しから聞こえてきたのは、依頼料払えば何でも聞いてくれるかという不安そうな声。
内容によると思うが、大体の事は請け負ってきている。難しすぎることは依頼料で考えさせてもらってるということを返した。

すると、土方はやっと決心を固めたのか、依頼内容を告げた。
銀時はその内容に対し、思わず「はあ?」と気を付けていた怪訝そうな声で返してしまった。


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