main

□雨の日に君は
1ページ/1ページ

昨日から降り続く雨は一向に止む気配を見せず、雨と同じ様に彼の帰ってくる気配も無かった。
彼の部屋の大きなソファーに背を預け、じっと窓のそとを見つめる。
「イルミ…」
一体いつになったら帰ってくるものなのだろうか。
無意識に漏れた呟きは、雨の音に掻き消される。
あのイルミだ。
心配しなくても必ず帰ってくる。
帰ってくるとは思っているけれど、何故か不安になってくる。雨のせいだろうか。

思わず手もとのクッションを握りしめた。
「…イルミ、大丈夫かなぁ…」
「大丈夫だよ。」
返事が帰ってきたことに驚き振り向くと、血だらけの彼が立っていた。
「あぁ、これは返り血。」
大丈夫だから、と彼は言った。
何故だか酷く安心して、涙が溢れる。
そんな私を察して、そっと抱きしめてくれる腕はとても優しい。
無表情な彼から伝わる優しさは物凄く落ち着くものだった。
「ナナシ、不安だったの?」
イルミの前で弱音なんて吐きたくないけど、イルミの方が毎日大変なのはわかっているけど。
…今なら。
私の小さな弱音を、雨が掻き消してくれる気がして。

「…少し、不安だったよ。」

小さく呟いたら、私を抱きしめる腕の力が少しだけ強くなった気がした。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ