影山さん家のお兄ちゃん

□俺らの日常
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〜ver.朝練の時間(視点;岩泉)〜



――朝7:45 青葉城西高校 体育館



「はよーす」


一人の男の声が体育館に響く。



そいつの名前は影山春斗。うちのバレー部の主将の片割れ。

今年は異例で二人の主将がいる。だから、片割れ。ちなみにあだ名はハル。

主将だから実力はピカイチだし性格もいいし勉強もかなりできるのだが、如何せんサボり癖が酷い。

少し前、一週間全く部活に顔を見せなかったから問いただしたら、「若んところ行ってた」とケロリとした顔で言いやがった。





この点だけはクズ及川の方がいいと言えるんだよな……。

ちなみに今日クズ川は日直だから朝練は休みだ。





「おーい、おーい、岩ちゃん!」

「っ…悪い、ちょっと考え事してた」


ハル本人に呼ばれて自分が悩みについて熟考していた事を知る。


「考え事?」

「…まあ、今それはどうでもいい。なあハル」

「(ビクッ」

「今日は何で遅れたんだ?」

「み、道端で困っている人がいらっしゃいまして…」

「ほーお」

「そ、そんな事より岩ちゃん。顔が怖いことになっているよ(汗)」

「そうさせたのは誰だ?」

「スンマセンもうしません」

「それ自分が何回使っているか分かってていっているか?」

「アハハ…」

「…はぁ。しっかりしろよ主将」

「面目ない」


目を泳がせまくるハルにジトっと視線を送った後、解放してやる。

その途端、安堵の息を漏らす主将に一言加えた。


「さっきみたいなふざけた言い訳を今度またしたら、お前の扱い及川と同じにするからな」

「それだけはご勘弁を副主将様」

「自分の行動にもっと責任を持て」

「はい…」

「あと後輩の面倒を俺に押し付けるな。ただでさえクズ及川は試合のとき以外は役に立たんのだから」

「……はい…」

「よし。じゃあさっさと着替えてこい。…あ、ちょっと待て。メニューは一昨日のと同じのにしたがよかったか」

「あぁ。昨日少しハードなのを試させたからな。今日は手加減すればいいだろう」




…コイツの切り替えの速さには尊敬させられる。




部員全員のこれからが懸っていると分かった瞬間に、ハルは一気に主将らしくなる。

つい数秒前まで項垂れていた奴とは思えない程だ。


「さすがに昨日のは基礎を多くし過ぎた。個人個人で若干変えたとはいっても多かった。あの5分の3くらいが適量だろうな」

「あぁ…確かにな。その後の練習の差支えになっている奴等が何人かいたしな。…じゃあハル」

「ん?」

「明日からこれの5分の3で朝はやればいいな」

「あぁ、頼む一」




そしてコイツについて特記すべきことがもう一つ。




影山春斗は皆をあだ名で呼ぶことが多いが、真面目な話のときは皆を名前か名字で呼ぶ。


だから、なんの変哲もなくフルで名前を呼ばれたとき、そのときは何かあると思った方がいい。





そのときの影山春斗は、必ず重要なことをいうのだから…。












(ハル)
(何、岩ちゃん)
(久々にトスあげてくんねえか)
(いいよ)
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