影山さん家のお兄ちゃん

□代替わり
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部活の終礼のときのこと。


「じゃあ、主将を発表する」


主将がそう言った瞬間、周りがざわりとした。

もう主将以外の三年生は先週で引退していていない。今日のために、主将だけが引退していなかった。

…今日発表されるのは事前に分かっていたはずなのに、いちいち騒めく必要はないだろう。

と、俺―影山春斗は思った。











「「静かにしろ」」


だから、主将の手を煩わせる前に俺と一は言った。

徹はといえば、背後に何かが見えそうな笑顔を浮かべていた。



瞬間、体育館の中は静まった。



主将はぐるりと、来年のバレー部を担う1,2年を見回した。


「来年の主将は『及川徹』副主将は『岩泉一』だ。…二人とも、これから頼んだぞ」


その声に徹と一は、はいっと力強く返事をする。










「影山は来期の生徒会長が内定しているからな、選考から外した」




一呼吸置いてから告げられたその言葉に、体育館の中はどよめいた。















「…あり?言っちゃまずかったか影山」

「かなりまずいですよ…。この事知っているのは、主将…小倉さんと及川と岩泉、それに先生方くらいですから」

「……それは悪かった」

「まぁ言っちゃった物は仕方ないですし。口止めさえすれば大丈夫ですよ。
コイツ等の事です。1週間あれば綺麗に記憶の彼方です」

「酷い言い様だな、おい」

「本当の事を言ったまでですよ」

「…やっぱりお前が一番可愛い後輩だよ」











……なんでそうなる。



俺がそう考えているのを、おそらく見越しているだろう小倉さんは、俺を無視して続けた。


「なんやかんや言って、お前は部員の事をよく見ているし、俺等上級生の事はちゃんとたてるし」




当たり前じゃないか、そんなの徹や一だってやっている。




「その当たり前がお前は凄く洗練されているんだよ。…お前を主将に据えられないのは、正直かなり口惜しい」





最後の一言は、徹や一を気遣ったのか少し小さめだった。










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