影山さん家のお兄ちゃん
□内心複雑な日
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本日の日付
“6/10”
察しがよい人なら、何の日か分かるだろう。
…いや、特に察しがよいという人でなくても分かるか。
「い・わ・ちゃーんっ」
「満面の笑みで迫ってくんじゃねぇ、クズ川!」
「避けないでよ岩ちゃん!俺、激しくブロックンハートだよ?!」
「お前がブロックンなんちゃらかなんて、俺には関係ねぇ!」
おっしゃる通りで……じゃなくて、話進めてくれよ二人とも…。
はぁ……。
二人を待っていたら、当分話が始まりそうにないので、俺から——
6/10
それは
我等が副主将——岩泉一の誕生日。
徹がハイテンションになるのは分かるが、本人に鬱陶しがられてちゃ世話ないよな…。
そんな岩ちゃんの誕生日の模様を、俺は簡単にリポートしていこうと思っている。
リポートになってなかったら、その時はごめん。
てか、多分ならない…。
あぁ…ちなみに、俺がこう話している間にも、徹は満面の笑み(女子達に向けるような仮面の笑みではなく素の)を顔に浮かべながら、岩ちゃんに何やら渡している。
本気で嬉しがっている時だけにしか見せない数少ない素の笑み。
それを見せられたからだろうか、その後の岩ちゃんの言動もいつもほど酷くは……ない?
「うぅ…いわちゃ…一がついに18歳。お母ちゃんは嬉しいよ」
「黙れクズ川。誰がお前の息子だ」
「…こういう日くらい乗ってくれてもいいじゃん!」
「誰が乗るかボケェ」
言葉だけ聞いている分にはいつもと変わりがない。
だが、今日は拳が一発も飛んでいない。
いつもなら、ここまでの流れの内に軽く三発…いや、四発は飛んでいるだろう。
「ハル何してるのー?」
「ボサッとしてっと、置いていくぞ」
「悪い!今行く」
ふむ、考察しながら歩くのは、あんまり良くないと見えた。
二人に置いてきぼりを食らうのは御免だしな。