今、再び―
□第1Q 『僕達の先輩』
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バスケ部のブースは何処だろうか…。
そう考えながら、人込みを擦り抜ける。
………あった。
やはり先輩達は僕に気付きそうもない。
ふぅ、と小さく息をついた。
…いつもの事だ。仕方がない。そう思いながら、入部届けを書く。
『黒子テツヤ 帝光中学男子バスケットボール部出身』
これでよし。そう思い、入部届けとペンを置いて、再び歩き出す。
歩きながら、中学の事を少し思い返した。
そんな中、中学の時、たったの一年…いや、自分は一軍に入ったのがかなり遅かったから、よくて半年の間だけ、自分達を導いてくれた先輩の事を思い出す。
いつも自分達を見守るような微笑みを浮かべていた先輩。
上級生だけでなく、同学年からも少し敬遠されがちであった赤司くんを可愛がっていた先輩。
緑間くんに3Pのアドバイスを与える代わりに、ラッキーアイテムを借りていた先輩。
紫原くんとお菓子の交換や、新作についてなどの情報交換をしていた先輩。
誰からも敬遠され、誰もを遠ざけていた灰崎くんが唯一懐いた先輩。
変わってしまった青峰くんに、「俺に勝てるのは俺だけだ……いや、アノ人なら…」と言わせた先輩。
料理の「り」の字もできない桃井さんの代わりに、よくレモンの蜂蜜付けを作ってきてくれ、なおかつ桃井さんに料理を教えようとしてくれた偉大な先輩。
黄瀬くんに……あぁ、そういえば彼らの中で彼だけは先輩と縁(えにし)がない。
…取り敢えず、先輩の卒業から2年がたった今でも、先輩のそんな姿を鮮明に思い浮べる事ができるのは僕だけではないだろう。
それほど、あの人の存在は僕達の中で大きかった。
先輩が卒業後、海外へ行くという事は聞いていた。
確かに先輩の口から聞いたらだ。
しかし、その後の消息は掴めていない。
アレが今尚存在している事から、世界のどこかに居る事は分かる。
それより、情報能力に長けた桃井さんをもってしても何も掴む事ができなかったというからに、やはり情報統制が凄いのだろうアソコは。
まぁ、赤司くんは家のを遣って情報を掴んでいるだろうが…。
(……あぁ、アレやアソコとか、先輩がトップの座に就いている大財閥の事です。昔からある、所謂旧家と呼ばれる財閥で、世界でもトップクラスの規模です。ちなみに株は全て持ち株
らしいです。先輩は未成年ですので、表向きトップは会長だった祖父君がやられているそうですが…。先輩のご両親は、幼い頃に飛行機事故で亡くなられたそうで、それからずっと祖父
君に英才教育を施されてきたと、中学の頃に聞きました)
“どこに、どこにいるんですか、麗先輩……”
と、屋上の影に気付いていない6人目(シックスマン)は、一人そう、小さく呟いた。
物語の歯車が回りだして、邂逅の時が迫っている事を知らずに…。
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