逃避行少女
□番外編
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暇だ。
ごろん、と私はベッド上を転がった。
暇だ。
(そうだ、セントラルタウンへ行こう!)
何処か聞き覚えのあるセリフを引用。
*
これは余談である、が。
実は私、ダブルなのである。
私のアリスは実に在り来たりだが。
私は目立たぬよう、地味ーに過ごすことをモットーとしている。
だが、しかしそれは逆に言えば。
所謂。
(勤勉で授業態度良しの真面目な生徒)
という評価になるらしい。
だって授業中に他の生徒みたいに騒いでたら、目立つじゃん。
嫌だよそんなの。
(――とまぁ、そんな感じで)
主に――副担任やその他の先生方の支持を得ているらしい。
とはいえ、止めるでもなく、傍観に徹しているだけなのだが。
そして――成績。
見た目は子供、中身は大人―――なんてのがリアルにある私。
(いや流石に小学生レベルが解けなかったらヤバいだろ)
流石にそこまで馬鹿じゃない。
時たま、『本当にこれ小学生レベルか?』というのはあるものの。
(―――けど、まぁ)
かといって、点数を取りすぎてはいけないのである。
(目立つじゃん――そんなことしたら)
お断りだ。
私は――あくまで。
ひっそりと。
地味ーに。
平穏に。
傍観に徹するような。
暮らし――を望んでいるのである。
アリス学園に入っている時点で無理だろう――というのは知らぬふりで。
(地味に暮らしたい。―――原作が始まるまでは)
日向君と乃木君が転校してきて早一年。
―――たぶん、原作が始まるまであと一年。
(せめて、それまでは)
ひっそりと影に潜んで、ちょっとくらい――。
(学園生活をエンジョイしたっていいよね)
勤勉でかつ真面目な生活をして、成績も平均か――それよりちょっと上を保持し――二年。
私の胸襟には、二つの星が輝いている。
(心読みくーん、暇ー?)
(暇だよー。どうしたのー?)
(本当? じゃ、セントラルタウンいこーよー。お小遣いはいったでしょ?)
(いーよー。わーい、じゃあ行こーっ)