逃避行少女

□逃避行少女
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 目が覚めると、イケメンなお顔がドアップでした。





――あ、これ夢か。







「寝るなアホ」


 どげしっ


「―――っ!?!?」





 踝にあっちゃいけない痛みが。




 足を抱えようと思ったら――、




「え」




 手足を拘束されている様で、ぴくりとも動かない。



 同じく、イケメン――もとい日向君も縛られていた。




 
……どうやって蹴ったんだろう。









「林檎!? 林檎も目ぇ覚めたんか!?」


「……あ」


「時宮さん!?」


『ちょっ、君達、声小さく……っ!』




 次々に聞こえてくる声。


 


(あー……まさか、これって)


 (捕まったフラグですか。やっぱり)






 露骨に面倒くさそうな顔をしていたのか――、日向君が複雑な表情を見せる。



 そして、何故か。


 聞こえるか、聞こえないかくらいの大きさで。



「悪ぃ……」


「は?」


 何故か謝られた。
















『――棗君のアリスで縄を切ってもらうんだ』



「チッ……、簡単に言いやがって」



 原作通り。


 原作通りすぎてびっくりなくらい原作通りだ。




 日向君がアリスを使用しようとした瞬間――、



『――それか、時宮さんのアリスを使って』


「―――はぁ?」



 訝しげな日向君の声。


 佐倉さんや正田さんもぽかんとしている。




 何を――言い出すのか。



「先生……、私はもう、あれは――」




 身体能力のアリス、は多分、使えない――と続けようとすると、鳴海先生の声がそれを遮る。




『いや――、今のアリスを使うんだよ、時宮さん。棗君の代わりに――出来ないかな』



「……」



 マジかよ。



「林檎……? どういうことなん? 今のアリスって……」



『そうすれば、棗君の負担を減らしてやれる』



「……はいはい、分かりましたよ」



 原作が――変わる。


 私という――イレギュラーの所為で。



(心なしかの――罪悪感)


 (これが吉と出るのか――凶と出るのか)




「……日向君」


「……あ?」


「ごめんね、君の、借りる」


「……はぁ?」




 アリスの感覚――というのはよく分からない。



 なんとなく。としか言いようがないのだ。



 
――そのアリスを貸してほしい、使ってみたい。



 と、思う。



――私に必要だ、と。




 そう思うこと。


 ぶっちゃけると、なんとなく、というのが大半を占めているが。



 そう思う――意識。



 意識することで――アリスを借りる様な。




 曖昧で、適当。だから、信用性の欠片も無い。




(鳴海先生のばーか)





ボァッ


「……熱っ」


 ちりっ、とした――熱いような感覚が手首に広がる。



――のも一瞬で、手の圧迫感が消え去った。






「な……っ!」





 日向君達が何やら驚愕しているが、それに気を取られている暇は無い。


 とりあえず、自らの足を縛る縄を解き、続けて日向君のも解く。



 そして、日向君が佐倉さんのを解いている間に、私は正田さんのを解く。




「……終わりました……けど」


『ありがとう。……うまく使えるじゃないか。これで――間違いないね、君のアリス』


「……」



 嬉しくねー。



(その後、先生がレオのアリスについて説明する)


 (―――その時、影が差した)




   (あー……、何か終わった気がする)


 (返せ、私の平凡ライフ)
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