逃避行少女

□逃避行少女
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「棗……!」


「……流架か?」




 かちゃり、と開いた扉から勢いよく入っていく乃木君。

 その後ろから正田さんと私。



 さっきから正田さんの視線が痛い。



 愛の再会をしている乃木君アンド日向君の間に入ることなどできようも無く――いや、正田さんは出来たようである。



「なっつめくーん!」




 パトラーッシュ! と言わんばかりに破顔させ飛び込んでいく正田さん。

 見事に避けられ壁に突っ込んでいくというこの放置ぶり。……ここまで可哀想なキャラだっただろうか。



 と、そこで。嫌そうな顔をしていた日向君の視線が、私に移り驚きに目を見開く。



「お前……」


「……や、あ、こんにちはー日向君」



 若干どもったが、とりあえずにっこりと笑みを浮かべて挨拶をする。

 日向君は、暫く目を瞬かせていたかと思うと、微妙な顔をし、その視線を乃木君へと戻した。




……ほーらね。喜ぶワケないだろ。ただのモブの私が。



 若干戸惑ったような表情な乃木君だったが、気を取り直したように日向君と一言二言交わしていた。











「時宮さん……」


「大丈夫? 正田さん」



 えぇ、まぁ。と正田さんがしょんぼりして頭を擦りながら私の隣へと出現した。



 よしよし、とその頭を撫でてやると、驚きに目を見開かれる。



「ん、何?」

「い、いえ……」




 正田さんは、そわそわと落ち着かなさげに視線を彷徨わせた。




「時宮さんって……、あまりよく分からなかったから」


「そうかなー?」


「話したこともあまり無かったでしょう?」


「そうだね」





 この子、こんなに可愛い子だったか。


 恥ずかしそうにする正田さんは心読み君並に可愛かった。


 原作では……あんまり覚えてないけど。




「だから、その、意外……っていうのかしら」


「そうかなー。まぁ、正田さんも話してみたらすっごく可愛いくてびっくりしたけどね」


「え」、





 赤面。


 うん、めっちゃんこ可愛い。





「ほ、褒めても何も出ないわよ……っ!」


「正田さんの可愛さは出てくるけどね!」


「〜〜〜〜っ!」





 この子はこういう類のことで褒められ慣れていないのか。それともこういう直球が苦手なのか。


 まぁ、何はともあれ。





「よーしよしよし。かーわいーいねっ!」


「や、やめなさいってば!」







(好感が持てるのは確かだと思う)




  (あれ、もしかしてメインキャラに近い子とフラグ立てちゃったのかな……)




 (まぁ、日向君辺りと触れ合うよりかは……)
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