逃避行少女

□逃避行少女
22ページ/64ページ



「RPGをやるんやで!」



 嬉しそうに佐倉さんは言った。



 自分の提案だ――とも。




「へぇ」


「せやから、林檎も参加してな!」


「へぇ―――、は?」





 ちょっと待て。

















「へぇー。だから林檎ちゃん、潜在能力系に居なかったんだねー」


「ごめんね。文句なら鳴海先生に言って」



 何処となく拗ねた表情の心読み君。

 きゅう、と私の後ろからしがみ付いている。





 めっちゃくちゃ可愛いです。




「あーあー。鳴海先生の恥ずかしい事、暴露しちゃおっかなー」


「やっちゃえやっちゃえ」



 ぶすーっ、とした顔で心読み君は私の右肩の方から顔を出した。ぎゅう、と抱き着く。


 どうしよう、スキンシップ激しいよこの子。



「林檎ちゃん、珍しいアリスなんだねー」


「キツネ目君」



 まんま、キツネ目の少年。


 よく心読み君と一緒にいるキツネ目君が私の前の席に座り、目の前の机に肘を着いた。





 心読み君は私の背中にへばりついたまま、やっほー、と声を出す。




「あーあ。私、潜在能力系が良かった」


「おいでよー。帰ってきてよー」


「やーん、心読み君かぁわいいー。だぁいすきー」




 僕もー、と心読み君はさらに抱き着いた。







 と、いうか。






 心読み君は私より年下なのに体格が大きいため、押しつぶされそうなんだが。






 それを見越してか、キツネ目君が心読み君を回収してくれた。




「林檎ちゃん」


「なーんだい?」


「僕のところにも来てねー」


「もっちろん……ってか、心読み君『真実の鏡』とかいうのじゃなかったっけ。……私行っても意味なくね? 私の心、何でか読めないんでしょ?」


「林檎ちゃんに来てほしいのー!」





 こいつは私に何をさせたいんだ。不覚にもキュンと来たぞ。





「そういえば、林檎ちゃんのとこの――特力って、何するの?」



 と、キツネ目君。




「んー……。RPGらしいけど」


「RPG?」


「佐倉さんから聞いてない? アラジンと魔法のランプっぽいの」



 そういえば、聞いてなーい、と言う心読み君とキツネ目君に適当に説明。




 そんな、とある日の午後。





(もう後戻りはできない)



  (悲しいことに)
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ