逃避行少女
□逃避行少女
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「RPGをやるんやで!」
嬉しそうに佐倉さんは言った。
自分の提案だ――とも。
「へぇ」
「せやから、林檎も参加してな!」
「へぇ―――、は?」
ちょっと待て。
*
「へぇー。だから林檎ちゃん、潜在能力系に居なかったんだねー」
「ごめんね。文句なら鳴海先生に言って」
何処となく拗ねた表情の心読み君。
きゅう、と私の後ろからしがみ付いている。
めっちゃくちゃ可愛いです。
「あーあー。鳴海先生の恥ずかしい事、暴露しちゃおっかなー」
「やっちゃえやっちゃえ」
ぶすーっ、とした顔で心読み君は私の右肩の方から顔を出した。ぎゅう、と抱き着く。
どうしよう、スキンシップ激しいよこの子。
「林檎ちゃん、珍しいアリスなんだねー」
「キツネ目君」
まんま、キツネ目の少年。
よく心読み君と一緒にいるキツネ目君が私の前の席に座り、目の前の机に肘を着いた。
心読み君は私の背中にへばりついたまま、やっほー、と声を出す。
「あーあ。私、潜在能力系が良かった」
「おいでよー。帰ってきてよー」
「やーん、心読み君かぁわいいー。だぁいすきー」
僕もー、と心読み君はさらに抱き着いた。
と、いうか。
心読み君は私より年下なのに体格が大きいため、押しつぶされそうなんだが。
それを見越してか、キツネ目君が心読み君を回収してくれた。
「林檎ちゃん」
「なーんだい?」
「僕のところにも来てねー」
「もっちろん……ってか、心読み君『真実の鏡』とかいうのじゃなかったっけ。……私行っても意味なくね? 私の心、何でか読めないんでしょ?」
「林檎ちゃんに来てほしいのー!」
こいつは私に何をさせたいんだ。不覚にもキュンと来たぞ。
「そういえば、林檎ちゃんのとこの――特力って、何するの?」
と、キツネ目君。
「んー……。RPGらしいけど」
「RPG?」
「佐倉さんから聞いてない? アラジンと魔法のランプっぽいの」
そういえば、聞いてなーい、と言う心読み君とキツネ目君に適当に説明。
そんな、とある日の午後。
(もう後戻りはできない)
(悲しいことに)