逃避行少女

□逃避行少女
30ページ/64ページ




「ん……」








 目が覚めると。










「……起きたか」





 

 声がした。



 ていうか、ここ何処だ。




「ここはある意味での――仮眠室だ。お前は、櫻野が運んできた」

「さくら、の」

 櫻野せんぱい。



(あ――)


(―――そう、いえば)



 たしか、櫻野先輩と遭遇して。


 そして、話を――聞いて。

 そして。





―――そして?





「……あ」


(そうだよ、確か私泣いて……)

(そのまま、寝――)



 そこまで思い出した瞬間、顔が羞恥で真っ赤になった。

(そうだよ私! 散々泣いた揚句、寝ちゃったんじゃん!)


 何ということか。

 
 一応私の精神年齢からみると年下の青年に、泣きつくとは……。


(恥ず……っ)


 羞恥心が爆発しそうである。


――と、いうか。


「え、運んだ!?」


 思わずがばり、と起き上がった。

聞き捨てならん!!
 運んだとは、一体、え、運んだ!?


 私がパニクっていると、僅かなため息が聞こえた。


 と同時に、先程の声の主がいたことを思い出し、そちらを見る。

 

――おそらく高校生。というか、思いっきりプリンシバルの人がいた。


 確か、名前は。


「い、まい先輩――、でしたっけ……」


「あやふやなのか。一応プリンシバルなんだがな」


「いえ、プリンシバルの方だってことは覚えてたんですが、名前は覚えてませんでした」


 謝罪はしない。ちょっとぐらいの罪悪感はあるけど。


 今井先輩は、もう一度大きなため息をついた。

 え、何この人ストレスでも溜まっているんだろうか。
いや、私のせい…なのか!?


「ちなみに、お前は横抱きで運ばれてきた」


「カムバック羞恥心!」


 ふん、と意地の悪そうな表情で言う今井先輩。



 聞きたくなかった。しかもこの恰好で―――、




「ちなみにその恰好だったからな。下着は丸見えだったぞ」


「ロリコン反対!! 普通に変態ですね!!」


 あえて言う必要があったのかはまるで分からんわ!!!

 発言が幼稚になってしまったのは仕方が無い。そりゃパニクるだろう普通。スルーできるかこんちくしょう。


 ていうか何この人あてつけかよ!!



「そんなわけないだろう。餓鬼の下着に興味などあるか。あくまで教えておいてやろうという慈悲だ」

「知りたくなかったです!」

「ちなみに山之内――、技術系代表の者も丁度同席していたんでな、よく分からんが――『見えそうで見えないっていうのが売れるのよね』とか言って写真を撮っていたが」


「やめて! 私もう学園来れないから!! 肖像権とかどうなったんですか!?」

 いきなり下ネタぎりぎりライン入るのやめてほしいし!

 まさかのあの恰好&ポーズ(プラス櫻野先輩)の写真がばらまかれたら私おしまいだろ!
 
 人生とかその他もろもろ。

(そういえば、お前の名前は)


(今更ですか!? ……えーと、時宮林檎です。初等部B組です)

(そうか、俺は今井昴だ。潜在系代表をやっている)

(え、知ってますけど……。ていうか、櫻野先輩はどこに?)

(もうすぐ帰ってくるだろう。というかお前――、櫻野に何かされなかったか?)

(へ?)

(いや、泣いていたそうなんでな、あいつ、というか秀……、が何かをしたのかと)


(え、いや別に何も)


(本当か? 脅されてるなら言え。あいつは腹黒いところもあ――)












(何やってるんだ今井?)


(あ、櫻野先輩)


(……)
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ