逃避行少女

□逃避行少女
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「おい」


「何でしょう」


「お前も明日一緒にまわ「結構です」……」






 に・ら・ま・れ・た!!




 理不尽じゃねぇ!? 嫌だよそんな面倒くさそうなフラグびんびんのヤツになんで参加しなくちゃいけないんだ!


 何か空気に殺気が混じり始めてきたが、大丈夫だよね私!?




「……何でだよ」


「そんな修羅場っぽいのに参加したくありません」


「はぁ?」




 だってあれでしょ、日向君佐倉さん乃木君という三角関係ーっ!



 そこに私投入とかどうなってんの、って感じだし! ヤダよ面倒くさい!




「ぐだぐだ言ってんじゃねぇ。来いっつってんだろ」




 いやん日向君から熱烈なお誘いを受けましたー。



 いえ、事実熱いです。





「あっつ!!!」



「わぁ! 林檎ちゃん!」





 顔の二ミリ横ぐらいに炎が出現しました。


 
 あっつ! 何これあっつ!!




 佐倉さんみたく、髪を燃やされるってことは無いけど――、熱いしっ!






 仕方なしに、その場を離れ――いざ行かん。ファンの子達目を瞑ってー! 許してー!






「うっ、わ! え、あ、え!?時宮!?」


「ごめんなさいマジごめんなさいファンの子達ごめんなさい刺さないでそしてごめんね乃木君」



 保身大事、ということで乃木君の後ろから抱き着く。ふはぁっ、こうしておれば、日向君も迂闊に炎を出せまい!!






 どうやらこういったことに耐性が無いらしい乃木君。


 抱き着いた瞬間、ぼぼぼぼっ、と真っ赤になり、――おやおや耳まで真っ赤だし。ウブだなぁ全く。











 と、油断していると。









「オイコラテメェ。流架に引っ付くんじゃねぇ」


「そうか物理攻撃があった!!」






 普通に襟首を掴まれて引き離されました。


 


 そのまま。




 顔をグイッと近づけられて。





えっ、あっ、き、キス……!?

















――なんて甘酸っぱいことはあるわけない。









「来いっつってんだろボケ」




「………………………………はい」




 ガンつけられました。
















 あの後。制服に着替えて。








 強制的にお約束させられ、とぼとぼと帰宅。



 その横を歩く心読み君とキツネ目君。



 もうこの二人はセットで良いと思う。









――今日。櫻野先輩と出会って。







 壊されて、気づかされて。






(もしかしたら私は――)



 (まだ、キャラを――キャラとしてしか見れてない)





(――――認めたくない)






 本当に私は弱虫だ。




 何て弱い――存在なんだろう。







「林檎ちゃん……?」



「んっ? あ、どーしたの心読み君」



 表情はあまり変えないけれど、不安げに聞いてきているのは分かる。




「林檎ちゃん」


「はーい?」


「林檎ちゃん」


「んー?」


「……」





 本当にどうしたよ心読み君。そんなに名前連呼されてもお姉さん困るだけなんだが。



 キツネ目君もきょとんとして心読み君を見ている。






 心読み君は。




 悲しそうな、悔しそうな声音で。





「僕さー、何で林檎ちゃんの心、読めないのかなー」



「え?」



「僕、ずっと林檎ちゃんの心読みたいって思ってたんだよねー。なのに読めないって、結局僕のアリスなんて役立たずだなーって」



「そんなことないと思うけどなー」



「じゃあさ」








 何で泣いたの? と。





 心読み君は。不満げな顔で。




 私の前髪を上げた。




 自然に、前髪で目元を隠すようにしていたものを。







「え」


「泣いたんでしょー? 目、赤いし」


「……」


「僕が林檎ちゃんの心を読めたなら、林檎ちゃんが泣いた理由、分かるのに」






 林檎ちゃんを、笑顔に出来るのに。と。






 心読み君は、不満げに。











「ありがとうね、心読み君」


「……」


「大丈夫、私には心読み君が居るだけで、助かってるの」


「……本当に?」


「勿論。大丈夫だよ心読み君」








――私はいつでもテンションMAXさ!







 そう言ってやると、心読み君は笑った。







(心が読めない……か)


 (ごめんね、私にも)




 (自分の心が分からないから)
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