逃避行少女

□逃避行少女
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 ドッジボールをやろう、とか言い出した茶髪ツインテ少女。




 当然、クラス中の反感を買ったものの。





「うちに負けるのが怖いんやな!!」



 何とまぁ、在り来たりすぎる挑発文句を発動した。











 間抜けにもその挑発に乗ったガキ共が、青筋を浮かべながらぞろぞろと教室を出ていく。

 馬鹿なのか。何なのか。




――まぁ、年相応で良いとは思うけれど。

 私は無論傍観に徹する。参加なんかするか面倒くさい。




 まぁ、私なんぞが居なくても気づくのは――精々心読み君くらいか。




 そう思っていたのに。




「時宮」


 全くどうしたことか。



「お前、行かないのか」


「……行かないよん。何せ私は頭痛と腹痛と腰痛と痴呆症を患っておりまして。ギックリ腰怖い」




 嘘だよーん。仮病だよーん。


 何て言葉はこっそりと胸のうちだけにしまっておく。






 そしてこの少年――日向君は。やけに最近、私に突っかかってくるのである。





 どうした全く。


 何故こうなった。




「ババアか」


「酷い! 全国の腰痛の乙女達に謝れ!」



 いつものテンションでツッコんでみる。



 思いっ切り眉根を寄せて睨まれた。



 やだ怖い。





「……棗?」



 と、そこで金髪の彼がひょっこりと顔を出した。


 手に兎を抱えた乃木君は、日向君に不思議そうな視線を向け、――私に気が付くと、怪訝そうに首を傾げた。


 何で棗とこいつが、とか思ってるんだろうなぁ。




 まぁ、私が聞きたいけど。



「時宮……?」


「えーと、乃木君こんにちは」


「え、あ、うん」



 そして何故に彼も私のことを知っているのか。



 平然と挨拶をかました私に、乃木君は途惑いの表情を見せる。





 そんな乃木君を見てか、日向君はふいっと私から視線を逸らした。


 それから真っ直ぐに教室の入り口の方へと向かう。



「行くぞ、流架」


「え、うん……」



 こちらをちらちらと伺ってくる乃木君に気付かないフリをして、うーんと伸びをする。



 さて、ひと眠りしますかね。





 そう思い、ぼすっと机に突っ伏すと同時に、冷ややかな声が響いた。



「時宮」


「……」


「来なきゃ燃やすぞ」





 むくりと身体を起こした。





(痛いの駄目)

 (絶対)
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