逃避行少女
□逃避行少女
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ドッジボールをやろう、とか言い出した茶髪ツインテ少女。
当然、クラス中の反感を買ったものの。
「うちに負けるのが怖いんやな!!」
何とまぁ、在り来たりすぎる挑発文句を発動した。
*
間抜けにもその挑発に乗ったガキ共が、青筋を浮かべながらぞろぞろと教室を出ていく。
馬鹿なのか。何なのか。
――まぁ、年相応で良いとは思うけれど。
私は無論傍観に徹する。参加なんかするか面倒くさい。
まぁ、私なんぞが居なくても気づくのは――精々心読み君くらいか。
そう思っていたのに。
「時宮」
全くどうしたことか。
「お前、行かないのか」
「……行かないよん。何せ私は頭痛と腹痛と腰痛と痴呆症を患っておりまして。ギックリ腰怖い」
嘘だよーん。仮病だよーん。
何て言葉はこっそりと胸のうちだけにしまっておく。
そしてこの少年――日向君は。やけに最近、私に突っかかってくるのである。
どうした全く。
何故こうなった。
「ババアか」
「酷い! 全国の腰痛の乙女達に謝れ!」
いつものテンションでツッコんでみる。
思いっ切り眉根を寄せて睨まれた。
やだ怖い。
「……棗?」
と、そこで金髪の彼がひょっこりと顔を出した。
手に兎を抱えた乃木君は、日向君に不思議そうな視線を向け、――私に気が付くと、怪訝そうに首を傾げた。
何で棗とこいつが、とか思ってるんだろうなぁ。
まぁ、私が聞きたいけど。
「時宮……?」
「えーと、乃木君こんにちは」
「え、あ、うん」
そして何故に彼も私のことを知っているのか。
平然と挨拶をかました私に、乃木君は途惑いの表情を見せる。
そんな乃木君を見てか、日向君はふいっと私から視線を逸らした。
それから真っ直ぐに教室の入り口の方へと向かう。
「行くぞ、流架」
「え、うん……」
こちらをちらちらと伺ってくる乃木君に気付かないフリをして、うーんと伸びをする。
さて、ひと眠りしますかね。
そう思い、ぼすっと机に突っ伏すと同時に、冷ややかな声が響いた。
「時宮」
「……」
「来なきゃ燃やすぞ」
むくりと身体を起こした。
(痛いの駄目)
(絶対)