逃避行少女

□逃避行少女
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「皆さん、待ちに待った文化祭でーす!」



 待ってねぇよ、という私の本音は喧噪に消された。

















「確か、林檎ちゃんも潜在能力系だよね?」


「うん」




 心読み君の可愛らしい問いに、無難に頷く。



「じゃあ行こう!」



 にこっ、と笑う心読み君。



 あー、いやされる。



 心読み君の後を追い、教室を出ようとした―――瞬間。








「あー、そのことなんだけどね、時宮さん」




 ちょっといいかな? と微笑む我が担任こと鳴海先生は明らかに――何かを企んでいる顔をしていた。



















「というわけで、特力の方へ移動になるんだけど、いいよね? もう話通してあるし」


「いいわけありません断固拒否です」





 だから何故そうなった。





 職員室に連れて行かれるなり――第一声がこれである。


 何がというわけなのかさっぱりだ。





 日向君を真似し、思いっきり睨んでやると、鳴海先生は慌てて手を振った。




「やだなぁ、睨まないでよ」


「何故ですか。移動になる意味が解りませんが」


「んー……。それは、自分が一番よく分かってるんじゃないのかなー?」





 見透かすような笑み。


 私はそれから目をそらす。




 鳴海先生はにんまりと笑った。




「ねぇ、どうして嘘ついたのかな? ……『身体能力』のアリスだなんて」


「……」


「違うよね? だって時宮さんは」




 人のアリスを『借りれる』アリスだと思うんだけど。






 違う? と鳴海先生はにっこりと笑った。









(三年目にしてついにバレてしまった、私の嘘)


(こうしてまた、平穏が音を立てて崩れていく)
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