美少女なう。
□美少女なう。
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さて、今更ながら、ちょっとしたおさらいをしてみよう。
前世うっかり車に轢かれて打ち所が悪く見事お亡くなりになった私は、絶賛人気連載中WJ掲載『NARUTO』に見事美少女として転生をしたのだった。
どうしよう。もっと複雑で深刻であるかと思っていたのに原稿用紙一枚の四分の一も満たさずに終わってしまった。
もっとあれだ。シリアスな展開を期待していた。
『私はもう人を信じられない……っ』『優しくしないでよ!』『誰か……助けてよ……』的な展開を望んでいた筈が何故こ・う・な・っ・た!!
納得いかない。
けれど未練はあるとはいえ、一切恨みなどは覚えていないし、恨む相手すらいない。私を轢いてしまった人にはあらぬ罪を着せてしまい申し訳ない限りだ。
ごめんなさい。全国の良い子の皆、漫画を見ながら道路横断は絶対にやっちゃだめだよ!
死に際のセリフが「イェー……ガー……!」とかだったなんて。進○の巨人の人食いシーンを見ていたら本当に死んじゃったとか本当笑えない。
さておき。
前回のマイブラザーこと美少年☆サスケ君との喧嘩でちょっとチラつかせていたというか分かりやすすぎるように埋め込んだ伏線を回収しようと思います。
やっぱりここは漢気を見せ、さっぱり爽やかにそして笑顔に白状しよう。
私の戦闘能力はゴキブリ以下です。
自分で思い浮かべた言葉は何とも辛辣でぐさぐさ胸に突き刺さる。うう、自分で多大なダメージを与えている。
だがこれは事実だ。
ただし留意すべきなのは、『この世界』で、ということ。
もし『前の世界』だったならば、『一般人以下』というドヤ顔で済ませられるレベルだが―――、ここは忍者という厨二病乙な方々が闊歩する世界なのである。
火の国って何。
忍者って何。クナイとか手裏剣とか振り回すなよ! 危ないじゃん!
天は二物を与えず。
その言葉通り、見事美少女補正をゲットできた私だったが、最強補正はどうやらゲットできなかったらしい。
ぶっちゃけ弱い。
ほぼ前世通りの力量である。
そこらへん歩いてる悪ガキに負けるレベルだ。
忍者様に小指で殺されてしまうレベルなのだ。
だが私は最初の方はポジティブだった。
幼きサスケ少年と共に『しゅぎょー』という名の可愛い遊びをし、サスケ少年に「エ? マジカヨコイツ」みたいな目で見られつつも愛情の裏返しだと盲信して頑張った。
そう――、頑張った。
今の現状で見れば、その時しゅぎょーをするかしないかで考えると、まだした方が救いようがあったのだと思う。
現時点では、木をぴょんぴょん移ったりするのは死にそうになりながらなら何とかなる。
純粋に走るのはブービー辺りだが何とか……なる。
だが体術は無理だ。
殴りかかられてかわすなんて無理だ。無様にこけて「ぎゃあああああああ!」でおしまいである。分かり切った未来だとも、うん。
けれど。
別に無様であろうとも気にしないのが私。寧ろ笑いに変えてやるわ。「お助けをー!」とか何とか叫んでやるわ。相手が男子なら泣き落とししてやるよ!
……と言いたいところだけれど。
私は残念ながらうちはなのである。しかもエリート少年サスケ君の双子の姉。
つまり、私が無様な恰好をしてしまえば、サスケは恥をかく。それは流石に申し訳なさすぎる。
けれど世界を隔てた戦闘能力の違いというものはどうしようもないわけで。
私は体術の授業をサボり、座学の授業だけは出て頑張って成績トップを取る。だが、体術の授業をサボっていることに関してカモフラージュするために、座学もちょこっとサボる。
こうして私は。
働かない頭を懸命にフル回転させて、日々頑張っているのだ。
働かざる者萌えるべからず