企画

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 同じクラスの黒子テツヤ君は、とても影が薄い。
 だが、私の前ではそのようなこと意に介さぬことにすぎず、日々黒子君を舐める様に見ることが私の幸せであり日常だ。
 小柄な身体つきに、男子にしては色白い肌。女子顔負けのさらさらの水色の髪にはうっとりせざるを得ない。無感情な瞳であるものの、犬を連想させるようなそれには妙な愛嬌を感じてしまう。ああ何て可愛いの黒子君。
 図書室でひっそりと本を読んで係の人に気付かれずに鍵を閉められるのが可愛い。
 声を掛けたら本気で驚かれて「慣れてますけど」みたいな平気な顔しているのが可愛い。
 何を思ったか「101匹わんちゃん」を無表情で読んでいたのが可愛い。
 敬語デフォが外見に似合いすぎて可愛い。
 そしてさり気にバスケ部レギュラーで試合に出ているというギャップに萌える。
 試合中の黒子君の恰好とか何。ご褒美としか感じない。
 他のレギュラーの人達と並んだ時の背の違和感が半端無いのを見る度に悶える。
 あとよくシュート外すのが天然っぽくて素敵。

「つまりアンタは何が言いたい」
「黒子君マジ天使」

 私が即答すると、友人が形容しがたい表情を浮かべた。ああ、女の子がなんて顔をしてるんだ全く駄目じゃないか。

「つーか、あたし黒子クンってやつが誰か知らないんだけど」
「なんてことだ! 友人よ、君は人生の七分の一を損してるよ!」
「あ、案外少ないね」
「嘘、七分の一って結構多くない!?」
「某CMで人生の三分の一は〜とかってやってるし」

 比較対象は微妙だけど、と友人は興味なさげに髪を弄る。
 しかし、何故分からんのだろうか。黒子君の可愛さを。あんなに可愛い男子早々居ないのに勿体ない。
 だがそれにしても、何で友人は黒子君のこと知らないんだろう。結構なミーハーな筈なのに。

「本当に友人って、黒子君のこと知んないの?」
「は? 知らないけど。何でさ」
「黒子君って、バスケ部の一軍? ってやつでしょ? キセキの世代とか何とか」
「はあ?」

 私の言葉に、友人は目に見えて訝しげな顔をしたかと思うと、眉を顰める。

「何いってんのさ、キセキって五人っしょ? キセリョとー、赤司様とー、緑間とー、青峰とー、紫原ー」
「と、黒子君」
「は? 何それ。マジでいんの? 一度も見たことないよ?」
「うちのクラスじゃん!」
「うっそ」

 友人の様子では、本当に知らなかったようだ。それはそれは何と勿体ない事をしているんだろう友人め、それでも腐女子か。
 慈悲という名目で、友人に黒子君が如何に愛らしいか教えてやろうと、教室のどこかに存在する黒子君を探す。
 黒子君。何処だ、相変わらず影の薄い黒子君は何処。

「友人、教えてしんぜよう。黒子君とは―――」
「……僕に何か用ですか」
「「ぎゃあああああああああっ!!!」」

 突如背後からの声に思いっきり叫び声を上げる。
 心臓がバックバクなのを抑えつつ、友人と共に勢い良く振り返ると、そこには案の定黒子君が降臨なさっていた。
 無表情デフォ。無感情な瞳。さらりと揺れる前髪。
 まごうことなき黒子君(本物)だ。くっそ可愛い。

「は、え、こ、コイツ誰」
「黒子です」

 淡々とお答えなさる黒子君は表情一つ変えない。そんなところも素敵だ。
 私がうっとりとしている様子を見てか、友人は顔を引き攣らせる。

「こ、コイツが黒子ぉ!? あたし、こんなの一度も見たことないんだけどっ!」
「友人、何てことを言うんだ! けど、その影の薄さこそも何か可愛くてきゅんきゅんするんだよっ! 分かれ!」
「……は?」

 力説。その二文字通り私は拳を握りしめ友人に語っていると、黒子君が露骨に変な表情をした。おお、表情が崩れた。そんなところも萌えるよ黒子君!
 萌える可愛い素敵しか繰り返していない私の撒き散らすハートを過敏に察知したらしい黒子君は、妙な危険信号を出しつつ後ずさりを始めた。

「……何を言っているんですか、みょうじさん」
「えええ言っちゃっていいのじゃあ言うよ! 私の長年の想い!」
「ちょっとなまえ自重という文字を思い出せ」
「私の辞書にはそんな文字はねえ!! 黒子君っ!! あのさっ!」

 冷や汗を流しつつ止める友人を振り払い、黒子君の手をがっと掴む。
 真っ白い肌。けど以外に男子らしい手。ああギャップに萌える……ってそうじゃなくて!
 長年伝えたかったことを今こそ伝えよう。きっと今でないと言えないから!!
 
「は、はい……」

 顔が引きつっていることなど気にしない! いざ!

「ずっと前から萌えてましたっ! 私と結婚してくださいっ!!」


(お断りします)
(えええ黒子君ってばシャイなんだからあ!)
(なまえ、黒子が引いてるの気づけ)


 挙式はいつにしましょう?



 

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