美少女なう。
□美少女なう。
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廊下をぺたぺた。
聊か行儀が悪いとは思うけれども、風呂上りなら裸足は必然である。そして手には、先ほど冷蔵庫から奪取したバニラアイス(棒)がある。まろやかな甘みが何ともたまらん。
べろん、とバニラアイスを舐めつつ嫌に長い廊下を歩いていくと、不意に玄関の方で話し声が聞こえてきた。声から大体は予想していたものの、人は好奇心には勝てないものだ。少し忍び足になり、玄関の方へと足を進ませると、案の定、予想していた通りなことに。
「兄さん! 今日俺の修行みてくれるっていったじゃん!!」
「……すまない、サスケ。今日は任務なんだ」
ハイ弟のデレキタァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
「じゃん」ってなんだ「じゃん」って!! アカデミーではもっとスカした口調なのに!! あああああその拗ねたように膨らました頬には萌えすぎて吐血ものですううああああ!!!! これでもし家オンリーで一人称「僕」だったらもっと素敵だったけれどそこまで都合良くいかないのなんて分かってるよ!! けど萌えるのには変わりない!!
影に隠れて〜イタチさん(兄)限定☆サスケのデレタイム〜(ご褒美)を盗聴・盗撮してハアハアしていたいとは思うものの、流石にイタチさんも可愛い可愛い可愛い弟の我儘にはお困りの様子だ。
そりゃああんな可愛いサスケの頼みなんて易々と断れないよね!!
そこで登場お助けアユちゃんです。
「サスケ、母さんがさっさと風呂入れって」
「……アユ?」
「それとイタチさん困ってるじゃん。任務なんだから仕方が無いでしょ」
「で、でも……!」
小さく俯いて不満げな表情を浮かべるサスケも萌えます。
「サスケ。いい加減にしなさい。イタチさんはいつも疲れてるのに構ってくれてるのに、どうして我儘言うのよ」
「お、俺だって、強くなりたいんだ!」
やや噛みあっていない会話に眉を顰める。だが内心は自分を殴りたくて殴りたくてたまらない心情だ。うわあごめんサスケ可愛いよおおおおお!! イジメてる私が憎いわああ!!
「だからって、イタチさんに迷惑かけるワケ?」
「でも、でも……、俺、強くなって、兄さんを助けたいから……」
きゅん、という音が聞こえたのは幻聴では無いだろう。
無論私の胸の高鳴りでもあるが、一番は――あの。サスケがこちらに向いている所為か、サスケの背中を凝視している兄ことイタチさん(ブラコン)の胸からであろう。
事実頬が赤らんでいる。だが美少年。いかがわしいことをしている訳では無いのに、こちらが恥ずかしくなるのは何でだろう。
恐らく内心悶えまくっているであろうイタチさんはすっくと立ち上がり、こちらに背を向けて一言。
「すぐ……帰る」
ブラコンは時をも凌駕するそうです。
***
「……何だよ」
「別に何も?」
ツンデレのツンを発動させた美少年サスケ君こと我が弟は不満げな表情で私を睨みつけた。
きっと私の登場により任務に出掛けてしまったイタチさんが恋しいのだろう。うん、鼻血出そう。
だが私はちゃっかりサスケのデレ100パーセントを目撃してしまっているので、サスケにとってはちょっとこっ恥ずかしい複雑な心情らしいのだ。別に気にしないのに。悶えて萌えるだけなのに。
「ただサスケってば、学校とはずいぶ態度が違うんだなーって」
「そ、それはッ!! ……って、いうか、アユ!! アカデミーで出回ってる俺の写真って、お、お前の仕業だろ!? 何やってんだよ!!」
「ああそれ? うん、私だよ。いやあ、ファンクラブの子達にお願いされちゃってさあ。モテる子は辛いねえ」
「な、な、な……!!」
あっさりと白状した私に拍子抜けというか逆に反応に困ったようで、サスケは間抜けさながらに口を開閉してどもった。
そんな可愛らしい様子にニヤニヤとせざるを得ない。うん、これは万人共通の生理現象に決まってるとも。
「何ニヤニヤしてんだよ!!」
「えー、サスケ君がかんわいいからー」
「何だよそれっ! 俺は可愛くないっ!」
「んなことあるかあ!! そんなん五億回逆立ちしてもねーわっ!」
「わ、わけわかんねーよ! つ、つーかアユ、知ってるんだぞ! お前が体術の授業ばっかさぼってんの!」
「やだあサスケ君ってばシスコン? そんなにおねーちゃんのこと気にかけてくれてんだあきゃーうれしーい」
「ちっがう! あああああああもう! 父さんに言いつけてやるからな! アユが真面目に授業出てないってこと!」
「な、あああああ!? 何!? サスケ私に死ねと!? 逝ってっらっしゃいってか!? いやいやあのいかんて! そもそも体術なんぞを授業に取り入れるのが間違って、」
「忍なんだから仕方ないだろっ!」
「いやあの別に私忍になんか……」
「とにかく父さんに言いつけるからな!」
「いや無理マジ無理ストォオオオオップ!!!! 落ち着けサスケ! ここは冷静にすべきだよ! ついでに体術滅べ!」
「じゃあアユだって写真出回すなよ!?」
「まさかの交換条件! ひい!! でも背に腹は代えられんしぃいい!!! でもあれ儲かるんだよねええええええ!!」
「どっちなんだよっ!」
「ええとええとええとおおおおおおおおお!!! イタチさん愛してるアーイ、ラブユ――ッ!!」
「あ、おい逃げんな!!」
青春って素敵。
少年少女愛を語れ