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□温泉に行こう?
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「きょーやっ、温泉行かねーか?」


それは指輪争奪戦から幾日か経ったある日のこと。


「…行かない」


雲雀の家庭教師であったディーノは、応接室に駆けてくるや開口一番にそう切り出した。
心底わくわくしているような明るい声音に雲雀は怪訝に思い、即座に切り返す。


「えー何でだよ!」


雲雀の返答にむくれ、机にまで迫ってくるディーノは修業の間でのあの不敵で身が竦むような殺気はまるで無い。
それが雲雀には少し不満だったりする。


「どうして僕があなたと一緒にそんなところに行かなきゃいけないの?」


仕方なく手を休めながら(そうしないと最終的には取り上げられてしまうから)雲雀は反論した。
この外人は時たま突拍子もないことを言ってくる。川や山で戦おうと言ってきたのもその例だ。


「んー…まぁ、慰安旅行だな。恭弥、雲戦でも大空戦でも頑張ったみたいだしな」


ぽんぽん、と頭を撫でられ、雲雀は苦み走った顔をした。
いつの間にかディーノは机を挟んだ向かい側ではなく、雲雀の隣りまで回り込んでいた。


「足の治療にいいところ、見つけたんだぜ?」


「!」


ディーノの手がスッと雲雀の太股を撫でてきて、雲雀は思わず顔を赤くした。その手の動きには傷をした箇所の手当てが出来るという指摘の他にも、何らかの意図が含まれているように思われたのだ。
というか、絶対にわざとだ。わざと。


「…なーに赤くなってんだよ。ただ撫でただけなのに…おぶっ!!」


ニヤニヤとからかうディーノに雲雀はキレてトンファーではなく直接鉄拳を食らわせた。
部下がいない今の状況では躱すことなど到底できるわけが無く、雲雀の拳をまともに顔面に食らったディーノはその場でもんどり打った。


「…まさかあなたと二人で行くわけじゃないだろうね」


そんなディーノを冷ややかな目で見下ろしたまま、雲雀は問い掛ける。
部下のいないディーノと二人きりで旅行に行くなど、自分の生命を脅かすことになるだけからだ。


「いや、日本にいる部下は全員連れて行くつもりだけど。あいつらも最近何かとお疲れだからな。たまにはゆっくり骨休みさせてやらねぇと」


「ふーん…」




 
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