Under
□Una bella persona
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日の陰った応接室。
少し薄暗い中に、二人の少年がいた。
一人は華奢な身体をシャツとベストで包み、腕に腕章をつけた少年。壁に背をつき、目の前に迫る少年を見つめている。
もう一方は、先程の少年よりは背も体格もよく、しかし細身の身体をした少々髪型に癖のある少年だった。
こちらは壁に手をつき、逃げられないように囲っている。
名を、雲雀恭弥、六道骸といった。
「雲雀君…」
骸は甘く囁き、顔をゆっくりと近付けてくる。女なら誰でも振り返ってしまいそうな容貌が、少年―雲雀に迫る。
「骸…」
雲雀も瞬きをし、骸を見つめた。
黒曜石のような瞳が僅かに潤む。
吐息を吐き、雲雀は骸に応えようと―
「どこ触ってるの」
するはずがなかった。
「―は?」
ムードに浸っていた骸は現実に引き戻され、呆けた声を出した。
雲雀はさっきとは打って変わったように憮然とした態度で骸を見ていた(当たり前だ。だってさっきのは骸の妄想だったのだから)。
「どこ触ってんのって言ってるんだけど」
雲雀の視線がちろ、と下に下りた。
視線の先には雲雀の服に手を差し入れている骸の手があった。
「…だって流れでこうなりません?」
「どういう流れ…君はそういうことしか考えてないの」
「だって…こういう雰囲気になったらキスしたり果てはその先のことをしたくなりませんか?…僕はしたいんですが」
「呆れた」
正直に言う骸に雲雀は溜め息をつき、骸の手を振り払って廊下に出ようとする。
骸はそれを追いかけ、手を握った。
「僕は雲雀君が好きですよ。好きだから…」
雲雀は立ち止まり、少し表情を緩めた。
「君は…よくそんなふうに行動できるよね」
「…ひ」
しかしその表情はどこか寂しげで、骸は目を見張る。
「……」
雲雀は口をつぐむと、やんわりと骸の手を離して行ってしまった。
骸は一人、廊下に佇む。
「雲雀君…」
雲雀は骸を見て何を思っていたのだろう。
今の骸からはそれは分かりかねた。
ただ、寂しそうな雲雀の顔が頭から離れなかった。
骸が暫く頭を悩ませていると、
「悩み事か?」
「うわああぁ!?」
誰もいないはずの廊下に突然声が響き、骸は柄にもなく大声をあげて飛び上がった。