Under
□Fire works
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賑わう声に提灯が揺れた。
滲み出る暖かい色は、闇と溶けて優しい雰囲気を醸し出している。
道を行き交う人の群れ。
普段なら煩わしい以外の何物でもないけれど、今日ばかりはそれが心地いい。
今日のこの場所にはそれが似つかわしいからだ。
「委員長」
人々の頭上に吊るされている灯を見つめていると、隣りに控えていた草壁が邪魔にならない程度の音量で告げた。
「夜店の閉まる時間です」
「うん」
携帯電話を取り出して液晶を覗くと、確かに店をしまう時間だった。
もう所場代の料金は徴収してあるから、後は問題が起こらないように注意するだけでよかった。
そう。今日は並盛町の夏祭りだった。
夏祭りは風紀委員会が取り仕切るのがここの慣わし。だから僕を主とした風紀委員が巡回し、問題があったら裁いた。
祭りは特に問題もなく行われ、花火も無事打ち上げられた。
祭は終わりの時刻を迎え、人々は家路を辿る。
動から静へと変わるその変化が好きだったりした。
「委員長、お疲れ様でした。後は我々だけで大丈夫ですので、お帰りになって身体を休められては」
「……」
夕方―いや正午過ぎから外に出ていた。
ずっと日に晒されていたせいもあるのか、身体には気怠さが残っているように感じた。
辺りを見回すと、着々と解体は進んでいる。
僕が抜けてもさして影響は無いように思われた。
「…じゃあそうさせてもらうよ」
静かに言い、寄り掛かっていた木から離れる。
草壁か頷いたのを確認して、僕は人込みの中に紛れた。
「……」
歩いていると、段々と疲れが増してくる気がした。
きっとこの人の群れの中を歩いているからだろう。
眺めているのと実際に歩いているのとでは全く違う。
林に入って裏道を通った方がよかったか。
そう後悔しながら僕は歩いていた。
時折、僕の肩と人の肩や腕なんかがぶつかる。僕は睨むのも億劫で、ぶつかった人の顔を見もせず歩き続けた。
帰る人々の波で前が見えない。
このままでは―
「…っ」
「うわっ」
…思った通りだ。
真っ正面から、衝突した。