Under
□Limoncello
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「ごちそうさま」
食事の席を立ち、恭弥は真っ直ぐバスルームへと向かった。
「まだ食ったばっかだろ?」
「汗かいてるから…気持ち悪い」
ドアから顔だけ出して言い、また引っ込める。
そのうちシャワーの音が聞こえてきて、部屋にはオレ一人だけになった。
今オレがいるのはいつものホテル。
恭弥を学校が終わった後に向かえに行き、ルームサービスで夕食を済ませた。(レストランへ行こうとしたけど乗り気じゃなかったらしい)
そして今は食事を終え、恭弥がシャワーを浴びている。
さて、待っている間どうしてようか…
「お」
そうだそうだ、忘れてた。
オレは立ち上がり、備え付けの冷蔵庫へ向かう。
冷凍庫を開け、取り出すのは黄色い液体の入っている瓶と冷やしておいたグラス。
このふたつを手に持ち、椅子に戻る。
明かりでオレンジに透けるグラスに瓶の中身を注ぐと、爽やかなレモンの芳香が漂った。
リモンチェッロ。イタリアの食後酒だ。
イタリアでは食後酒はdigestivoと呼ばれており、一部の地域では伝統的な食後酒としてよく飲まれている。
アマルフィーやソレントのレモンを皮だけ使い、砂糖と一緒にアルコールに漬け込んだもの。
アルコールは30度以上と高く、甘い。だから冷凍庫に入れていても凍らない。
キンキンに冷えたリモンチェッロをグラスで少量いただくのが飲み方だ。
以前リモンチェッロが生産されている地域を訪れて飲んで以来、オレはこの酒を気に入ってよく飲んでいる。
日本でも手に入るが…質に色々あるらしいから、自分で取り寄せて持ってきた。
もちろん本場の天然物だぞ。
グラスに注いだリモンチェッロをくゆらせて揺らし、香りを楽しむ。
本物でなければこの味は出ない。
爽やかかつ芳醇な香りが鼻腔をくすぐって飲まずともオレはいい気分になった。
しかし、飲まないのも勿体ないので(当たり前だ。数ある中でも特別なものを取り寄せたんだぞ)オレは少しずつ口に含んで舌で味わった。
ああ、何て優雅な恋人の待ち時間。