□咲いて咲いて!
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ある朝、私の頭に、花が咲いてた。

寝起きで鏡の前に立ったからいけないのだと思い、見てすぐに私はそれのことを忘れて顔を洗った。歯も磨いた。髪を整える時になってようやく、頭にある異物の存在を思い出した。鏡越しに見てみると、チューリップに似ている、花だ。頭に花が咲いた経験がなかったので、私はとても慌てた。
「えぇ!?どうやって髪をとかしたらいいの!?」
その時はまだ、寝ぼけてた。

▼咲いて咲いて!▼


やっと落ち着いて、というよりもそれについて考えるのを一度放棄して、私は朝ご飯を食べることにした。昨日ジャムおじさんにもらった美味しそうなロールパン。半分に切って、間に野菜とハムを挟んだ。起きてすぐに沸かしておいたお湯で紅茶を入れる。
空は明るい風は暖かい。鳥が鳴き、すがすがしい。完璧に素敵な朝ご飯!!

「…頭に花が咲いてること以外はね」

イヤイヤと頭を振ると、上の方で感じる違和感。ちょんまげって、こんな感じがするのかもしれない。
ウンウンと首を振ると、かっくんかっくんと花が揺れる。あ、茎が折れたらいやだなあ、と思ってすぐに止めた。
頭の花が何か分からないから、折れちゃっていいのかもわからないしね。
引っこ抜かないように気をつけなきゃ。とも思う。
紅茶を一口のんだ。

…そういえば、なんの花だろう。

紅茶はちなみにローズティー。バタコさんにもらった美味しい紅茶。
鏡で一瞬見ただけだけど、頭の花はバラではなかった。チューリップ、でもなかったような。実際あんまり見てないからよく分からないんだけど。

なんの花だろう?

あ、そういえば、ちょっと前に頭に花が生えてる子を見かけたことがあった。大きく開いたお花がキラキラと頭の上でキレイだった。あの時、バタコさんがなんの花なのか教えてくれた。

"あれはね、恋の花だよ。あの花が見えるんだね"
"あの花が見えるってことは、もうすぐあなたにも咲くかもね"

…ああこれは、恋の花なのか。

なるほどと思ったら、これが恋の花以外にありえないように思えた。それにすごくワクワクする。まだ恋をしたことがないから、とっても気になる。ああ、誰を好きになるんだろう!
あの子の花は大きく開いていた。私のは、きっとまだまだ蕾。全然痩せているから、咲くのはもっと先だろう。
これって、好きになったら咲くのかしら。恋が実ったら咲くのかも。
ああ、でも。私まだ好きな人が分からない。分かったら咲くのかも。

…好きな人?…誰だろ。

うーん。お腹減ってきた。
今更だけど、サンドイッチをまだ一口も食べてない。考え事は、苦手だから、2つのことを同時にできないんだね。

ジャムおじさんのパンは、1日たっても香ばしい香りが消えない。とっても美味しそう。鼻先でクンと香った匂いにドキッとした。あれ、これ?一口食べたら口の中いっぱいにパンの味がして、胸が苦しくなった。ふわっと、心がおかしくなってどこかに飛んでいってしまいそうになった。何度も食べたことがあるんだけど、今日はいつもより胸がドキドキいう。
そうだ、昨日助けてくれたアンパンマンの香りがするんだ。それだけ、それだけなのに、なぜだろう。
私の好きな人がアンパンマンだったらいいなのに、って思った。

思った。って思って、なんだか頭が熱くなった。うわぁ、とっても恥ずかしい!
アンパンマン?アンパンマンなのかなぁ?
私、あぁ、よく分かんないけど、早く、早く花が咲けばいいのに!





2009/03/XX

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