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【きり丸視点】

昨日は本当に大変な目にあった。

トラブルに巻き込まれるのはいつものことだとしても、昨日のただ働きは勘弁ならなかった。

金持ちだと思ったから、何か御礼がもらえると思ったからあのお姉さんを学園まで運ぶ役を買って出たけれど、予想に反してお姉さんは一文無しだった。
まったく、こんなことならしんべえに任せるんだったぜ。
そんなことを思っていたら、昨日はつい敬語が抜けてしまっていた。でも、お姉さんも気にしてなかったみたいだし、まあいっか。俺だって、腹が立っていた割りには親切にした方だ。

ひたひたと廊下を歩く。
だいたい今も、そのただ働きの最中だ。

「お姉さーん!起きてくださーい!」

足を痛めてる上に、昨夜遅くまで起きていたから、きっと自力で起きることができないだろう。そう土井先生に言われて、ジャンケンに負けた俺が迎えに来ることになった。

「おはよーございまーす」

「んん…お、はよ」

あ、反応があった。
戸の向こうから、もぞもぞと動く音がする。

「起きましたー?」
「ん、…ん?」

あれ?とか、おや?とかいう声も後から続いて聞こえてきた。何かあったんだろうか。

「お姉さん、入りますよ」

たてつけの悪い引き戸を引いた。

中に入ると、お姉さんがボケッとした顔で布団の上に座っていた。
目が、腫れてる。泣いた人の目だ。
夕べ遅くまで起きていたって土井先生言ってたけど、まさかずっと泣いてたのかな。

「お姉さん、どうしたの?」

そう聞くと、お姉さんは俺に視線を合わせて「きり丸君?」とかすれた声で尋ねた。

「そう、俺きり丸」
「ここ…」
「忍術学園」

お姉さんは昨日、山賊に襲われて怪我したところをここまで運ばれたんだよ。
そう言おうと口を開くと、俺よりも先にお姉さんが「あ、そうだ」と声をだした。

「昨日、運んでくれたよね」
「そうだよ」
「…あ、おはようございます」
「…おはよう」

やっぱり、このお姉さん間が遅い気がする。
それか、まだ頭が起きてないのかも。

「…私、何したらいい?」
「とりあえず、着替えたら?」
「ああ、」

お姉さんはやっと、ノロノロと動き出した。そして枕元にあるジャージを手に取る。
ジャージ…あそこに売ったらいくらくらいになるだろう。そんなことを考えたら、目が銭になりかけた。危ない危ない。

「…」
「…」
「…」

ジャージを着ようか、着物を着ようか悩んでるみたいだ。
「着物にしたら?」そう言ったら「借り物だから…」って返ってきた。
借り物…ああ、山田せ…伝子さんのだ。

「気にしなくていいよ。ジャージじゃ目立つから、着物借りたんだろ?」
「…うん」

ありがとう。って言ったお姉さんはなんだか悲しそうだった。
昨日は感じなかった違和感。
今までのトラブルメーカー達とは違う、諦めとかそんな…。
…いや、一緒か。目が腫れてるからそう見えるだけだ。
で、どうせ俺達の春休み(正しくは補習授業だけど)を潰して、この人のお悩み解決を手伝うんだぜ。先が見えてるっての。

「着替え終わったら食堂いきますよ」
「うん」

するとやっと、お姉さんは着替え始め…!?

俺は慌てて部屋から飛び出した。

やっぱりあの人寝ぼけてた!
俺がいるのに着替え始めた!

頬を両手で挟む。
お姉さんの白い背中がフラッシュバック!
ああああ、しばらく顔の熱が冷めそうにない。

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