銀魂

□彼はまた無茶をする
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「銀ちゃん。私、銀ちゃんのためならヘモグロビンになれるよ。」

私は真面目に言ったのに、銀ちゃんは一拍置いてすげー嫌そうな顔で「え、やだ、キモっ」って言った。私もその嫌そうな顔をマネして「え、返事が、女子高生みたいで、キモっ」って言ってやった。そしたら銀ちゃんは「え、俺が、若々しくて、嫉妬?」だって。意味分からん。

「だから、私は銀ちゃんのためなら血液になれるよって言ってるのに。返事がキモイってひどくない?」
「ヘモグロビンじゃねぇのかよ」
「同じやん」
「同じじゃねぇよ。アイツらの役割分担すげーんだから。ほんと上手いことできてるよ。誰もサボれねぇようになってんだから」
「いや、銀ちゃんのヘモグロビンは確実にサボってるね。サボってるから、そんな眠そうな目をしているんだよ。酸素が瞼まで届いてないんだよ。」
「違いますぅ。俺の目は常に力こもってるから半目なんですぅ。瞼でのヘモグロビンの活躍はすごいんですぅ。アニメ見てみろ。俺の目赤いからね。」

そうか、銀ちゃんのこの眠たそうに見える瞳は半目なのか。私はずっと、瞼がぶ厚いのだと思ってた。

あれ…違う。そうじゃない。話がずれてる。
私は銀ちゃんの真っ赤に染まった背中を、正しくは真っ赤に染まった着物を見つめた。赤いのは目じゃなくて背中の方じゃないか。

「だから、私が銀ちゃんの血になれたらこんな大ケガ、すぐに治してあげるのにってことなんだよ」
「…ばっかじゃねぇの?血液にそんな能力ありません。」
「…ばかじゃないの?血液には血小板ってのがあってねぇ、それが瘡蓋作んのよ」

そして私が血液なら、傷口に血小板を集めまくってやるのだ。

銀ちゃんの着物を触れば、普通とは違う変な湿り気が手に移った。まだ乾いてない。着物をここまで濡らすほど出血したのかと思うとゾッとした。
他人のためにここまで無茶しないで欲しいなぁと思った。


「それに」

それになぁ、と銀ちゃんは言葉を続けた。

「おまえが血液なんかになっちまったら、もったいなくて一滴も流せなくなるじゃねぇか」

…え。

声に出ていたみたいで、『え』ってなんだよ、という銀ちゃんのふてくされた声が返ってきた。その耳は赤い。
赤い赤い、銀ちゃん照れてる。ふむ。私の口角は上がった。笑わないと泣きそうになってた。

もったいなくて一滴も流せなくなるじゃねぇか、だって。嘘みたい。
私なんかをもったいなく思うほど好いてくれてるなんて、今初めて知った。

「私、ヘモグロビンになろっかな…」

「ふっ、ばっかじゃねえの?」

ばっかじゃねえの?なんで嬉しそうなんだよ、銀ちゃん。気持ち悪いって、言ってたじゃない。
気持ち悪いよ銀ちゃん。笑うか赤くなるかどっちかにしなよ、私が照れる。

二人して赤くなって。ああヘモグロビンだ、と思った。このまま私が銀ちゃんの血になったら、銀ちゃんは無茶できなくなるのかなぁ。そうだったらいいなぁと一人でほくそ笑んだ。

とんだ独占欲だけど、今はその術がないので私の心の中で留まっている。私は血液にならない方がいいかもしれない。

だからずっと、無茶するかしないかは銀ちゃんの自由だ。そして多分、彼はまた無茶をするんだろう。




fin.

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