歴代の拍手たち。

□六代目
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階段を駆け上がった先にある、重い扉を押し開ける。
眩しい太陽の光に、一瞬目が眩むも、一歩足を踏み出して、屋上に飛び込む。
そこに―――彼は、いた。



「ブロリー…って、あれ?」



長い手足を投げ出して、寝転ぶ人物。
どうやら目的の人物は、お昼寝中らしかった。
肝心の話し相手が眠っていては仕方がないので、ブロリーが目を覚ますまでの間、彼の観察をする事にした。
隣に腰を下ろし、まじまじとブロリーの顔を見つめる。



「ホンッッット、イケメンだよね。寝顔は幼いと言うか、穏やかと言うか。」



ブロリーとは、一年の時から同じクラスだった。
今まで色恋沙汰とは縁のなかった私が、ブロリーにまさかの一目惚れ。
それから、一方的と言えるくらい話しかけて、こうして、寡黙な彼の隣にいる事を許されたものの。
どんなに想いを伝えても、彼がそれを真に受ける事はなかった。

友人曰く、私は軽々しく好きだ惚れたと言い過ぎている、らしい。
だって、言葉にしなきゃ伝わらない事だってあるし。
それに、ほら、押してダメなら押し倒せって言うじゃない?
だから日々こうして、ブロリーの元に足を運んでいるのです。私って健気!



「写メでも撮ってやろうか。」



貴重なブロリーの寝顔を拝めたのだ。これをカメラに収めない手はない。
ポケットからケータイを取り出して構えた―――瞬間。
突然、大きな手に腕を掴まれ、危うくケータイを落としそうになった。
見れば、ブロリーが眠そうな目で自分を見上げていて。



「あ、おはようブロリー。」

「・・・・・、」

「や、これはだね、決してブロリーの寝顔を写メろうだとか、そういう事を考えていた訳ではなく…」

「来てるなら、起こして構わない…」

「いやいや、あんな気持ち良さそうに寝てるとこ起こしたら悪いし…(てか、寝起きの顔セクシーすぎ…!)」



ブロリーの顔を直視出来ず、視線を泳がせながら答えれば、それが気に入らなかったのか、腕を引かれた。
為すがままに倒れ込み、何とかブロリーの顔の横に手を突いて自身を支えるが。
傍から見れば、この状況は、自分がブロリーを押し倒しているように見えるのではないだろうか。
慌てて離れようとした矢先、ブロリーの空いている片手が、頬に触れた。



「、ぇ…」

「…おやすみ。」



触れた、唇。
重なったそれはすぐに離れ、ブロリーは自分を抱きかかえて、何事もなかったように再び眠ってしまった。
一人残された私は、非常に混乱していた。
彼は今、何をした?だって、どうして、彼は私の事なんて、眼中にないはずなのに。
寝ぼけているにしたって、これは心臓に悪すぎる。

ブロリーの腕の中で赤面し、悶々と思案する私に。
目を覚ましたブロリーが、好きだと告げてくれるのは、もう少し先のお話。





サボり魔ブロリーと、それに付き合うヒロインのお話。
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