歴代の拍手たち。

□十三代目
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試験で赤点を取ったザックは、放課後の教室で追試を受けていた。
僕の教科だけでなく、体育以外の教科は全滅だと言うのだから、何ともザックらしい。
そんなザックは、真面目に追試を受ける事もせず、ジッと僕を睨んでいる。理由はただ一つ。彼の愛しい恋人が、僕の隣にいるからだ。



「本当に君は理解が早いね。」

「ダニー先生の教え方が上手いからよ。」

「嬉しい事を言ってくれるね。じゃあ、この問題は解けるかな?」

「おい目玉野郎!そいつに近付くな!!」

「ザック、そんな言い方は失礼よ。先生、ごめんなさい。」

「君が謝る事はないさ。」

「ザックは脳筋だから。」

「あんな恋人を持つと苦労するだろう。可哀想に。」

「テメェ、どさくさに紛れて触んな!!」



彼女の肩を抱き寄せれば、ザックは烈火の如く怒り出す。いつも彼女とイチャついている仕返しだ。
ザックは、僕が彼女に好意を抱いている事に気付いている。だからこそ、僕から彼女を遠ざけたいのだろう。しかし、肝心な彼女は、僕の気持ちに全く気が付いていない。
僕が先生であるが故に油断しているのか、不必要な程に距離を縮めても、彼女は警戒する事もなく無防備だった。これではザックが心配するのも頷ける。



「僕の部屋に、君が興味を引かれそうな本があるんだ。この後、一緒に―――」



僕の言葉を遮るように、ザックはガタンッと大きな音を立てて立ち上がる。
そして、ずかずかと僕の前までやって来ると、彼女の腕を引き、噛み付くようにキスをした。



「ちょ、ザック…!なに、す…ンんッ…」

「…、は…」

「、ぁ…んぅ…ッ!」



それも、思いっきり濃厚なキスを。
力が抜けた彼女を片手で抱き上げたザックは、手にしていた追試の答案用紙を机に叩き付けると、殺気混じりの眼差しを僕に向けた。



「こいつに手ェ出したらぶっ殺す。」



唸るように呟いて、ザックは彼女と共に、教室を出て行った。
答案用紙に視線を落とせば、そこには大きな文字で「くたばれ!!」と書き殴られていて。



「…せめて名前くらいは書いて欲しかったよ。」



嘆息交じりに呟いて、答案用紙をゴミ箱に捨てる。
仕方がない。こうなったら、ザックには課題をやってもらう事にしよう。
いつも彼女を独り占めしている怨みを込めて、大量の課題を出してやると決めた。








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