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□黄笠小話(12月分)
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「セーンパイ。」
自分で聞いても甘ったるいなと苦笑するくらいの声でオレは彼を呼ぶ。
呼ばれた本人は一瞬ピクリと体を動かしたが直ぐに何にも気にしていないという風にそっぽを向いてしまう。
そんな彼の行動は大変可愛らしいのだがこちらにも意地というか、望みというか、とにかく譲れないことがあるのだ。
「ねぇ幸男さん。」
「−っ。」
普段は呼ばない下の名前を呼ぶだけで真っ赤になってしまう目の前の彼をオレは大変愛おしく思う。
「いい加減こっち向いて欲しいっス。」
「・・・その言い方は反則だろ。」
笠松幸男という人物は愛を知らない。
愛され、愛することを知らないのだ。
それは彼の育った家庭環境が特殊だったのもあるだろうけれど、基本的に彼は人から貰う愛を疑い、気づかないふりをする。
そんな彼に一から色々なことを教えたのは他でもない俺自身だ。
けれど彼はまだ全面的にオレからの愛を受け取ろうとはしてくれない。
だからオレは決まってこう言うのだ。
「ねぇ幸男さん。オレがめいいっぱい愛してあげるっス。だからあなたからこの唇にキスをして。」
キミにアイを ボクにキスを
キスしてくれた分だけオレの最上級の愛をお届けするっスよ!
2013/12/24