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□黄笠小話(2月分)
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「お前のことは一生忘れない。」

そう言って笑った彼は今までに見た中で最高の笑顔だった。

「お前は俺の人生でだった一人のエースだ。」

その言葉を聞き、俺は喉まで出かかっていた好きの2文字を呑み込んで代わりに小さく笑ってこう答えた。

「オレにとっても生涯で唯一のキャプテンはあなたっスよ。笠松センパイ。」

そう言えば彼は恥ずかしそうに笑ってそのまままたな、と行ってしまった。

一人残された体育館でオレは声を殺して泣いた。

初めて好きになった人だった。本気で好きだった。けれどこの想いを告げるには彼にとってもオレにとってもバスケ部の主将とエースという肩書きが重く、大きすぎた。
彼のバスケ人生の中でたった一人のエースという称号をもらったことになんの不満もない。それどころか喜ぶべきことなのだ。そう喜ぶべきことなのだがオレはそれだけでは飽き足らず彼の唯一の人になりたかった。これから先生涯を隣で過ごすことを許される唯一の人に・・・
けれどそんなこと許されるわけもない。
当たり前だ。自分と彼は同性同士なのだから。ましてやバスケ部の主将とエース。あ、今はもう引退してしまったから元、か・・・
それでもその関係がオレの心には重くのしかかり鎖となってオレの彼への気持ちに蓋をさせた。

好き、なんスよ。笠松センパイ・・・

そう小さく呟いた言葉は誰に届くこともなく体育館の床に落ちていった。

大きく開けられたドアからは春の風が吹き込んだ。

主将とエース

黄瀬は知らない。
体育館を去った笠松もまた一人声を殺して泣いていたという事実を。

2014/2/1
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