プロローグ
□プロローグ
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「さぁ…聖なる火をもってこの不浄に塗れた者を浄化するのです。」
十字架に張り付けられている濃紺の髪の女。
瞳からは黄緑の燐光―彼女は死神だ。
「業火に燃えよ!」
「己の罪を贖え!」
口々に叫ぶのは、天使。
足元に放たれた炎は死神を焼き尽くしてゆく。
「フフフ…アハハハハ!アハハハハハッ!!」
靡く様な金髪の女天使が狂った様に笑い出す。
群集から離れた所で茫然と立ち尽くす、少年の様な格好の少女。
少女は声にならない声で叫んだ。
〈母様っ!〉
少女は急いで、母親の元に駆け寄ろうとしたが、
〈逃げなさいっ!〉
母親の声が少女の耳を掠めた。
「…っ!?」
空を仰ぐと青白い光が強い輝きを放っていた。
「あ…あれは…」
天使が忌ま忌まし気に光を睨む。
〈母様の…魂〉
涙を流し唇を噛み締める少女。
〈ごめんなさい!〉
少女は踵の返してその場から走り去った。
濃紺の髪に黄緑の瞳―少女の容貌は火中の女死神によく似ていた。
〈ゴメンナサイ
アノ時、救エナカッタ…
私ハ、逃ゲテシマッタ
デモ、モウ逃ゲナイ
・
俺ハ、戦ウ〉
少女の心が翳り出す。
これが全ての始まり。
―――つづく。