プリムラ

□4.新戦力
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災厄の2日目、月曜日。

「………。」

ツカサは携帯の画面をじっと見る。
昨夜の解析の結果、召喚アプリはジプスが使用するものよりも遥かに性能が高く、試験的に数人が使用することになった。
そしてその中にツカサも含まれていた。
ヤマトも有用なら、とアプリを使用することにしたようだ。

召喚アプリにはすでに、元々彼女が使用していた悪魔が登録されている。
他にも悪魔をオークションで競り落とす機能や、合体機能まで付いていて、確かにジプスの使用しているものより使い勝手がいいと思われた。
問題は、それ以上のことが掴めていないこと。管理人も、サーバーも、何一つ掴めていない。
…そしてそれを調べるのに適任であろう人物が行方不明であることだ。

菅野史。
ジプス名古屋支局が擁する才女が行方不明になっているという報告が入った。
外出した形跡も無く、捜査は難航しており、彼女がいないとジプスは大損害というのが全局員の見解であった。

そして昨夜ドゥベを倒した彼らだが、一旦ジプスの護衛付きで家まで帰ることにしたらしい。
家が残ってる可能性は低い、とはとても言えず彼らは今頃護衛に連れられ家路についているのだろう。

一般人の被害に、悪魔によるものも増加している。
召喚アプリ使用の際、契約戦というものがあるのだが、それに使用者が敗れた場合、呼び出された悪魔は自由になる。
そんな野良悪魔が増えたせいか一般人を襲う個体もいるようだ。



「早速召喚アプリ悪用者が現れたらしいな」

ヤマトが息を吐く。

「現場に向かいましょうか?」
「いや、迫を向かわせた」
「そうですか」
「それより菅野の捜索はどうなった?」

ツカサは報告書を見つつ答えた。

「まだ行方を掴めてないようです」
「そうか、せめて生死ははっきりさせたいが。…それと、だ。昨日のあの4人を私に同行させ大阪に連れていく」
「彼らに帰る家など無いから、ですか?」
「そうなるな。…秋江、だったか。あの適当そうな男は。奴に残り3人を呼ばせに行った。そろそろ来るだろう」

ヤマトは立ち上がり、ツカサもそれに続いた。

「それに、ドゥベを倒した奴らだ。有能な人材には相応の機会が与えられるべきだろう」
「そうですね」
「お前も後で紹介させよう。おそらく彼らと連絡を取る機会もあるだろうしな」



ヤマトは彼らに大阪への同行を要請した。
もはや帰るべき日常は無いのだと言って。
10時に新橋集合となったが、果たして全員来るのだろうか。
そう思いつつツカサはヤマトと共に新橋にいた。
マコトは東京まで残るものの、見送りとして同行する形となり、10時まで待つことにしたのだが。

バチッと弾けるような音がして悪魔が出現した。
マコトとツカサは身構える。

「ヤマト様、下がってください。片付けます」
「ツカサ、私も手伝おう」

「いや、ここは私がやろう…」

ヤマトは不敵に笑い、携帯を構える。

「殲滅せよ、ケルベロス」
『分かりました、主』

彼の呼び声と共にヤマトが昔から使っているケルベロスが飛び出し、敵を蹴散らした。

「フン、こんなものか」

ケルベロスが帰還し、ヤマトが携帯を閉じた時だった。


「あの…だ、大丈夫ですか?」


か弱い声が聞こえる。
振り返ると彼ら4人が到着していた。

「よく来たな、自ら行動することを選んだか」
「待たせたな」

不思議な雰囲気の少年が笑う。

「…そうだな、人を待ったのは何年振りか。愉快な奴だ」

ヤマトも笑った。

「そうだ、紹介しよう。私の使用人の明星司だ。彼女も大阪に同行する」
「明星司と申します。気楽にツカサと呼んでくれて構いません」

ツカサは一礼する。
お調子者そうな少年が口を開いた。

「えーと俺は、」
「既に資料でお名前は拝見させていただきました」
「じゃ、じゃあ俺らも気楽に下の名前でいいよ」
「ではダイチ様、イオ様、ウサミミ様、譲様。本日は大阪に同行していただきありがとうございます」
「そんな堅苦しくなくっていいって。俺は譲じゃなくてジョーって呼ばれた方がいいかな」

適当そうな男、ジョーはそう言って笑う。

「それにしてもメイドさんか〜、いいね」
「確かにこんな状況じゃなかったらよかったかも」

ウサミミが苦笑する。

「そういや大阪ってどうやって行くんだ?」
「ああ、少し待っててくれ」

ダイチの疑問に答えるようにマコトが携帯を捜査した。
SLが動き装置が露見する。
そしてそこからポールが出てきて地下へと続くようだ。

「それではついてきてくれ」

ツカサはヤマトに続き器用にポールを伝って降りた。
地下にあるジプス専用車両で彼女たちは大阪に向かう。

「マコト様、東京を頼みます」
「ああ」

ツカサはマコトに一礼して列車に乗り込んだ。




―2013.6.3
 

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