プリムラ

□6.巨門との決戦
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ツカサが緑茶を持って戻ると、ヤマトがウサミミと会話している最中だった。

「ツカサか、ご苦労」
「ウサミミ様の分も持ってくるべきでしたね、今すぐ持ってきます」
「お構いなく」

ツカサが踵を返した時、衝撃音と共にサイレンがけたたましく鳴り響く。

「…!何事だ」
「峰津院局長、通天閣付近に敵出現!南北に2体です!」
ヤマトはてきぱきと局員に指示を出し、モニターに映像が映る。

まるで青い翼のような化け物が自衛隊をあっさりと倒しているのが映った。

「召喚アプリ、呼称確認!コード『メラク』です」

続々と人が集まる中、全員に緊張感が走る。

「メラクの進路から人をどかせ。北は私が片付ける。…ツカサ、出るぞ」
「はい!」

ヤマトは南にいるメラクの指揮をウサミミに任せるとツカサを連れて通天閣の北側へと向かった。




通天閣北側


「やはり狙いは通天閣ですか…」
「当たり前だ、結界なのだから」

2人の目線の先にメラクが佇んでいる。

「何をしてくるか分からない。先に召喚するぞ」
「はい」

ヤマトは携帯からアプリを起動させ、ケルベロスを呼び出す。
ツカサも召喚アプリを起動させ、自らが使用する悪魔を呼び出した。

「バイブ・カハ」
『おや、出番かい?』
「ええ、あいつを倒しに行きます」
『…なるほど、あいつは腕が鳴るねぇ』

巨大なカラスがツカサの前に現れた。
戦闘準備が整ったところでメラクが光る。
危機を感じた2人が引くと、メラクから砲撃が放たれた。
氷結属性のものらしく、一瞬で温度が冷え込む。
そしてメラクの円形部分が伸び分離して、子機のようにこちらへ向かって爆発した。

「なるほどな」

ヤマトは笑うと南にいるウサミミたちにメラクの特性を伝えた。
メラクの目的は通天閣の破壊。先ほどの子機が基部で爆発した場合、通天閣は倒壊するだろう。

「早々に殲滅するぞ」
「了解しました」

その言葉で2人は戦闘に入った。

「アプリによると奴の攻撃は氷結属性だ。弱点は衝撃属性。よってメラクへの攻撃はお前のバイブ・カハが適任だろう。私は子機の殲滅にあたる。幸いアプリのおかげか私たちも多少なりとも悪魔のような力は使えるしな」
「それではヤマト様、お手数ですがメラクに近づくまでの援護をお願いします」
「ああ、行け」

ツカサとバイブ・カハが動く。
メラクはそれを察知したように子機を飛ばしたり悪魔を召喚したりするが、全てヤマトとケルベロスに屠られる。
砲撃もなんなく躱し、ついにツカサはメラクの眼前へと辿り着いた。

「行くよ」
『しょうがないねぇ』

背後のバイブ・カハに語りかける。
ツカサと付き合いの長い悪魔は承知したように鋭い衝撃波を巻き起こした。

「嵐の乱舞!」

ツカサも負けじと衝撃波を起こす。
突発的な竜巻が起こったかのような突風にもツカサは目を閉じず、メラクの反応を窺った。
やがて嵐は止み、ツカサは煙の中のメラクをじっと見た。


ギギギ、と不快な音が鳴り、メラクが霧散する。


ツカサたちの勝利だ。

「やった…!」
「よくやった、ツカサ」
「はい!」

ツカサが満面の笑みで返すとヤマトも満足そうに笑った。

「南へ行くぞ、あいつらはどうなったか」




通天閣・南


ヤマトとツカサが辿り着くと、メラクはすでにいなくなっていた。

「メラクを倒したか、予想以上の成果だ」

正直ツカサもまだ戦っているものかと思っていた。
通天閣も多少傷んではいるものの無事のようだ。
…これで本日の所要は終わったことになる。2日目のセプテントリオンを倒したのだから。
ヤマトとツカサは先に本部へ戻った。

「さて、19時の列車まで好きにしろ」
「はい。それではお茶を淹れてきますね、メラクの襲来で飲む暇がありませんでしたから」
「…そうだったな」
「それにヤマト様のお仕事は残っています。私にも手伝わせてください」
「本当にお前は優秀だな。私の手を煩わせない」

そう言って、ヤマトは微笑む。

「ひとまず茶を飲むか。その後仕事を手伝え」
「はい、それでは行ってきます」

ツカサは緑茶を淹れるためにその場を後にした。




―2013.6.4
 

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