プリムラ

□12.空の向こう
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災厄の5日目、木曜日。
この日は朝から忙しい。

未明から東京で神経毒による死亡者が出ている。
恐らくセプテントリオンの仕業で間違いないのだが、姿が見えない。

「推察だが、奴は空にいる」
「空、ですか」
「ああ。障害物もない、そして我々からも見えない。間違いないだろう」

ヤマトが言う。

「東京タワーに向かうぞ、奴らはタワーを狙う。…結界だからな」

峰津院家が利用する『龍脈』。
その力を応用して、ジプスはタワーを霊的な結界とした。
結界がなくなった都市は崩れ去り滅びるのみ。
だからセプテントリオンはタワーを狙うのだ。




芝公園


ジプス局員と共にヤマトとツカサが空を眺めていると、近くにいたのかウサミミとダイチたちがやってきた。
ヤマトが今回のセプテントリオンについて話すと、…空から何か落ちてくる。


毒々しい色をした塊がそこにあった。
ジプス局員が慎重に調べると、それは爆発する。

「なんだ…うっ!」

恐らく神経毒の発生源はあの塊とみて間違いないようだ。
…局員が犠牲になってしまったが。

「各自戦闘態勢を!。敵の所在を把握するために座標を観測する。私を守れ」

ヤマトの一声で、ツカサ、そして来ていたウサミミたちは戦闘に入ることになった。

より正確な観測のため、ヤマトは複数の座標を調べなければならない。
その間彼は無防備となる。
おまけにあの毒素がもう一度落ちてくる可能性もあるし、もちろん悪魔だって出てくる。
毒素の塊が落ちてきた場合は毒を散布する前に破壊しなければならない。

「ヤマト様の護衛は私にお任せください。ウサミミ様たちはその他をお願いします」
「分かった」

そう言った瞬間、毒素の塊が落ちてきた。

「さあ、ショータイムだ」

作戦が始まった。



ヤマトに迫る敵をツカサは薙ぎ払う。

「毒素がさすがに厄介だな」

観測しながらヤマトが言う。

「大丈夫ですか?」
「問題ない。次に向かうぞ」

次々と落下してくる毒素の塊は、ウサミミたちが撃破し、散布を未然に防いでいる。
悪魔たちも彼らの前になす術がないようだ。

ヤマトの観測も無事終了し、一行は芝公園に戻った。



「データ入力完了、座標算出、スキャン開始…出るぞ」



ヤマトの観測により、セプテントリオンの正体が明らかになる。
そこに映っていたのは巨大な化け物だった。
召喚アプリによる名称は『アリオト』。
ただすでにここの上空を通過したらしい。

「…まずいですね」

ツカサの呟きと同時に、ヤマトはすぐに東京周辺にいるジプス局員に連絡した。

「タワーの電源を切れ!結界を一時凍結する」

ツカサは驚いたがすぐに理解した。
セプテントリオンの目的はタワーの破壊。
ここで電源を切って結界を凍結すれば彼らは東京タワーを素通りする。
多少の被害は出るが、セプテントリオンに破壊されるよりずっとましだ。

「チッ、通信が…」

ツカサは祈る。どうか無事タワーの電源を落とせていますように、と。


しばらくして通信が復旧した。
無事タワーの電源を落としたそうだ。
アリオトはタワーを素通りし、北上している。
現在稼働しているタワーは大阪、名古屋、東京、そして札幌。
アリオトは次の標的を札幌に変えたのだ。

「早く対策を練らないとだな」

ウサミミが言う。
その通りだ。このまま放っておくとアリオトは確実に札幌のタワーを破壊するだろう。
東京タワーの電源もいつまでも切っておけない。
先にアリオトを倒さないとまた舞い戻ってくるはずだ。

札幌に到達しないうちにアリオトを倒す。
…ただし問題がある。

「アリオトの高度が悪魔の使役範囲を超えていますね」
「じゃ、じゃあ悪魔じゃ攻撃できないってことかよ!」
「そうです」

ダイチが焦る。

「各自、アリオトを撃ち落とす方法を探せ」

そう、撃ち落とすしかない。
しかしその方法があっただろうか?

「ツカサ、こちらもこちらで探すぞ」
「はい」


そしてツカサたちは本局へと戻り資料を漁ることにした。




―2013.6.7
 

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