プリムラ
□21.共存へ
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災厄の7日目、土曜日。
ツカサは目覚めた後着替えて、ヤマトを迎えに行こうとして、昨夜のことを思い出した。
…もう自分はヤマトと敵対していることを。
「……習慣は恐ろしいですね」
恐らくまだ皆起きていないだろう、ということでツカサは朝食を作りに行くことにした。
「ツカサ、おはよう」
台所には先客がいた。
ジュンゴが既に何か作っている。
「おはようございます、ジュンゴ様」
「早いね」
「あなたも。…何か作ってるのですか?」
「茶わん蒸し。朝ごはん、大事だから」
「そうですか。では私はご飯を炊いてお味噌汁を作りますね」
ツカサは朝食作りに取り掛かる。
そしてあらかた出来上がると、ダイチとヒナコ、イオが入ってきた。
「おはよ〜って、おお…」
「ツカサちゃん、料理できるんやな」
「おはよう」
ウサミミだけはまだ来ていないようだ。
「まだ寝てるのかもな、俺ちょっと起こしてくる」
ダイチはそう言って彼を起こしに行き、そして彼が来て全員で朝食を食べながら作戦会議である。
現在、ヤマト率いる実力主義派は大阪を、ロナウド率いる平等主義派は名古屋を拠点にしていることが分かっている。
そして人間が争う前に、まだセプテントリオンもいる。
仮にヤマトかロナウドがセプテントリオンを倒した場合、彼らがポラリスに謁見する資格を持ってしまうのでそれを避けるためにもセプテントリオンはこの共存組で倒さなければならない。
「…はー、難しいなあ…でも朝食うまい」
ダイチは表情を落としてからすぐ戻すという芸当を発揮している。
「お気に召したようなら幸いです」
「んー、ツカサちゃん。ちょっと思うんやけどな、敬語やめへん?」
「え?」
ツカサはきょとん、とヒナコを見る。
周囲はヒナコに同意のようで、頷いていた。
「せっかくの運命共同体だし、敬語じゃなくてタメ口はダメ?」
ウサミミが聞くとツカサは困った顔になる。
「…物心ついた時からこうでしたから…。でも、努力しますね」
「じゃあまずは様付けやめてみるとか?」
「そう、ですね。さん付けでいいですか?」
「呼び捨てでいいですよ」
「でも、私はこの中で一番年下ですし」
「ツカサちゃんらしいなあ」
「茶わん蒸し、おかわりいる?」
一通り笑ったあとで彼らは朝食を食べ終えた。
共存への行動が始まる。
ツカサが東京の様子を見ている時だった。
「ねえ、大変!ジプスの人が武芸館前で暴れているって」
そんな話が耳に入る。
「…罠、ですかね」
きっと暴れればダイチたちが来ると踏んだのだろう。
ツカサはダイチに連絡を入れようとしたら彼らは先に現場へと急行してしまったらしい。
「急がなきゃ…!」
武芸館前
ツカサが危惧していた通り、すでに彼らは囲まれていた。
「みんなっ!」
「あ、ツカサ!」
フミ、マコト、ケイタ…そしてジプス局員らがそこにいた。
「やあツカサ。意外だね、あんたは局長について行くもんかと」
フミが手をひらひらと振っている。
「…他にやり方はあるはずです。一つの選択肢を盲信してはいけない」
「ホント、変わった。局長が苛立ってたのはこれか」
「…やるしかないのか」
ダイチは覚悟を決めたようで携帯を構えた。
と同時に大阪勢も携帯を構える。
悪魔が召喚され、戦闘が始まった。
「まさかお前と戦うことになるとは」
ツカサの前にはマコトがいる。
「…局長の一番近くにいながら、何故あの方に付き従い尽くさなかった?」
「付き従うだけが、私の生きる道じゃありませんから」
マコトの蹴りを難なく躱して次はツカサが氷結魔法を叩き込む。
「ぐっ!」
「考えた結論が彼らの味方に付くことです。だから私はここにいる」
「氷の乱舞」
氷結属性の攻撃が吹き荒れる。
収まった時、マコトは倒れていた。
ジュンゴはケイタと、ダイチとウサミミはフミを、イオは残りの局員を倒したようだ。
「本当に戦うことになるなんて」
イオの表情が暗くなる。
「確かに決めたけど、きついよな」
「…ヤマト、いなかったね」
ジュンゴの一言にツカサも頷いた。
「恐らくヤマト様の性格上、誰かと一緒ということはありえないでしょう。…どこかで時が満ちるのを待っているはずです。敵対勢力を殲滅できる時を」
「うっわー…確かにヤマトってラスボスっぽい。城の奥でさ、こう『フハハ、よく来たな!』って言うのが定番じゃんよ!」
ダイチの言葉に一同が沈黙する。
「…ごめん、ゲームとかしない」
「俺はわかるよ、ダイチ」
「ゲーム?けんけんぱ、とか?」
ツカサはその状況を見てくすくす笑う。
「確かに言いえて妙ですね。龍脈の力を最大限に発揮したヤマト様なら確かにラスボス級の力でしょう」
「やっぱり!?…あれ、ツカサゲーム知ってる?」
「やったことはありませんが、話くらいなら」
雑談を交わしながら、彼らは負けた勢力の説得をすることに決めた。
説得役はウサミミに一任することにした。
「じゃあ、説得してくる」
「おう、頑張れ」
ウサミミの背中を見送って、一行は一旦東京支局へ戻ることしにした。
―2013.6.15