プリムラ

□22.世界の可能性
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ウサミミの説得は成功し、フミとマコトとケイタが仲間になった。
そして現在、フミがげんなりした顔をしている。

「ツカサ、ウサミミ、助けて」
「ええっと…」
「何があった?」
「うわ、説明アゲインフラグ?」

フミが仲間に加わったということで、ダイチたちがフミに質問している。

ポラリスはアカシック・レコードの管理者だ。
そのレコードには過去の世界の記録もある。
そしてポラリスがレコードを編集できる存在なら、災厄が起こる前の世界に戻せるのではないか、ということだった。
それができるなら、死んだ人間も壊れた街も何もかも元通りに、また彼らは普通の生活に戻れる。
これをできるかどうかフミに聞いていたようだ。

「まあ不可能ではないよ。でもさぁ、復元するってつまりは巻き戻すってことでしょ?おんなじ世界が復元されるならアンタたちもおんなじなわけで、多分この災害を覚えていない。それならもっかいおんなじ災害が起こっちゃうだけじゃないの?」

フミが面倒そうに言う。

「そ、そんなんウチらが頑張ったりすればなんとかなるわ!」
「俺たちが頑張って記憶残すとかすればいいだろ?」
「…非論理的だね」
「な、なんだよう、せっかくみんなで考えてたのに」
「はいはい、すいませんでしたねっと」

「戻す…か」

ツカサは一人考える。
もし戻せるというのなら、その世界でもヤマトは実力主義社会の実現を目指すのか。
…それはよく知っている。きっと力のない者が治めているこの世界に絶望して目指すはずだと。
だから彼女は今決別しているのだ。

「もし、戻せるのなら」

ツカサの日々は、決して平凡ではなかった。
それでもあの日常が愛おしく感じる。
今この災厄が終わっても、世界は荒廃したままだろう。
もし戻せるのなら、そんな想いを彼女は心の片隅に抱えた。



そして、今度は名古屋勢との戦いである。
名古屋にいるアイリからのSOSを受け取って彼女の後を追いかけたはいいものの、それは彼女らの罠だった。
アイリと、オトメと、平等を目指したい暴徒たちと戦うことになる。

「ああもう、なんで分かってくれないの!?」
「それはこちらの台詞ですよ」

アイリとツカサの魔法がぶつかり合う。

「ツカサさんだって、平等になりたいって思ったことあるんじゃないの?ヤマトさんの傍にいたんなら、あの人が無茶苦茶だって分かってるじゃん!」
「…私は、ヤマト様の世界もロナウドが掲げる平等もいらない。世界には他の道だってあるはずだから」

会話しつつも2人の魔法が激しくぶつかる。

「埒があかない。…万魔の乱舞!」
「こっちだって!万魔の乱舞!」

ツカサはくっと力を込めた。

「え、何?きゃああああっ!」

爆発が起きて、煙が晴れた時アイリは倒れていた。
その後名古屋勢との戦いも収束する。


奇妙なのはロナウド、そしてジョーがいなかったことだ。

「…ヤマトみたいに企んでるのかも」

ウサミミが呟く。

「それに、早く方法決めないと死人がでちゃうよな…」

ダイチも顔をしかめた。

「世界を復元しても、記憶消えるかもしれんしなあ…」
「…でも早くなんとかしないと。こうしたいって主張しないと」
「そうですね、…ロナウドはどこでしょうか。名古屋にいないとしたら…」
「…東京?」

全員がハッとする。

「まだ報告は入ってへんけど…嫌な予感する」
「ロナウドなら、多分俺らの後にヤマト倒しに行きそうだしなあ…」

とりあえずヤマトとロナウドへの警戒は怠らない、そういう方向になった。
そしてウサミミが説得し、アイリとオトメが仲間になる。



…そして問題は人間同士だけに留まらなかった。
宮下公園にセプテントリオンが出現した。
アプリで確認した名称は『ベネトナシュ』。

「…なんというか、今までに比べて大分シンプルですね」

ツカサは目の前の敵を見て呟く。
白い円錐の角を取って逆さにした、という他のセプテントリオンに比べて至ってシンプルな姿をしていた。

「早く倒さないと、ヤマトやロナウドが乱入したら厄介だしな…」

全員召喚アプリを使って悪魔を召喚した。



「…人間不可侵?」


ベネトナシュのスキルを見てジュンゴが首を傾げる。

「悪魔の攻撃じゃないと、ダメ?」
「そうみたいです、アリラト!」

雷がベネトナシュを直撃した、その直後。

バチッと音がして、ベネトナシュが召喚していた悪魔が消えていく。
そしてそれだけではない。

「なっ!?」

ツカサたちが召喚していた悪魔たちも携帯に戻ってしまった。

「な、なんでだよ!」

ダイチが慌てて携帯を見る。
ツカサも見ると、

『error』

その文字が画面に出ていた。

「撤退しよう!」

ウサミミの声で、全員一時撤退することになる。
しかしベネトナシュは妨害しようと、なんとメグレズの目を撃ち出した。

「え、どうして!?」

芽が起こす地震に耐えつつ、ツカサたちは撤退する。



「なんだよアレ!」

ダイチが撤退して一番に叫んだがまさにその通りだ。
人間の攻撃が効かない上に悪魔は強制的に帰還させられる。

「対策考えんとしんどいなあ…」
「どうすればいいのでしょうね…」

自分たちの抱えている問題は多いのだ、そう自覚して一行は話し合いつつ離れた。




―2013.6.15
 

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