プリムラ

□23.そして近づく
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「フミさん」
「お、ツカサ。様付けやめたんだね〜」
「…それは置いといて。どう思います?ベネトナシュのあの攻撃」
「ん〜、分かりやすく言うとハッキングかなぁ」

フミはパソコンをいじっている。

「もう悪魔使えるでしょ?」
「ええ」
「多分ベネトナシュはジャミングをやったんだろうね。そうやってアプリとの繋がりを妨害した」

「…なるほど」
「正直対策は次に出会うまでに考えるしかないよ。こっちも何か無いか探してる」
「ありがとうございます。…人間の攻撃が効けばよかったんですけどね」
「まあ、だって今日7日目だし、セプテントリオンが北斗七星になぞらえてるのなら今日で最後でしょ?敵もそれくらい厄介になるって」
「そうですね」

うーん、とツカサは考える。

「それより、局長大分苛立ってたよ。気が立ってるっていうのかな。迫っちは特に分かってたみたい」
「それはその、なんというか」
「まあ当然かもねー。アタシさ、局長に『愛』って概念があるか疑問だったんだけど」

唐突な話にツカサはきょとんとする。

「でもきっとあるんだろうね。もしくはあったんだろうね」
「は、はあ…」
「うわ、鈍い。いやむしろ近くにい過ぎてるから?」
「え、でも、ヤマト様は」

フミが息を吐く。

「ツカサ、一応自分が局長に一番信頼されているって自負はある?」
「自負になると自惚れかなと思ったことはあります」
「自負していいよ。ていうか、アンタの場合自負しなきゃダメだと思う」

正直そっち方面に興味はないけどさ、とフミは言った。

「局長多分アンタのこと、」
「大変!」

フミの言葉を遮って入ってきたのはオトメだった。

「…おトメさん、タイミング悪い」
「ええっ!?…そんなことより、ロナウドさんが東京で演説してるらしいの。私たちが平和を乱してるって」
「そんな…!」
「あーあ、とうとう来たか」

フミとツカサは立ち上がって、芝公園へと向かうことにした。

「…それであの、」
「あー…いいや。頑張れ」
「えええ…?」

フミは何故か呆れ顔である。

「ツカサって理解は早いけど鈍いんだね、なるほどなるほど」
「あら、何の話?」
「おトメさんがタイミング悪かった話」
「それはごめんなさい」




芝公園


そこに、ロナウドとジョーと、残りの暴徒たちが待ち構えていた。

「来てくれたか」

ロナウドは開口一番に言う。

「俺たちに協力してくれ。そうすれば俺たちは君たちと争わずに済む」
「…だからって賛同しない人を暴力でねじ伏せるのは間違っています」

イオの言葉に全員頷いた。

「…フッ、やはりか。なら拳を交えて戦うしかないな」
「ジョーさん、あんたも同じ意見?」

ダイチの質問にジョーは微笑む。

「ん〜、まあそうだね。ダイチくん、考えたことある?社会的弱者の立場ってヤツ。貧富とか人種とか病気とか」

ジョーの口からそういう話が出ると思わなかったのか全員彼の方をじっと見る。

「そういう人たちがみんなと同じように幸せになるのって、社会の支援が大きいんだよねぇ」
「でも、昔より変わってきています…きっと10年後にはもっと」
「そうだね、でもツカサちゃん。世の中には10年も待てない人がいるんだ」

彼の笑顔に悲しみが混じる。
まるで大切な誰かを亡くしたような。

「だから俺は戦うってことで」


ジョーたちは悪魔を召喚した。
ツカサたちも応戦するために悪魔を召喚する。


混戦、だった。
ツカサは暴徒たちの鎮静に赴いていたが、ダイチとジョーが戦っている。

「ジョーさん…」
「はは、正直ね、戦いたくなかったんだけど…」

そして一方ではロナウドとウサミミ、そしてマコトが加勢している。

「迫、まさかお前がそちらに着いたとは」
「ロナウド…ここで決着をつけよう」
「俺だっているんだけどなあ…」



しばらくして、決着はついた。

「…これで後はヤマト様だけ、か」
「それにベネトナシュも残っているね」

残っている問題は大きい。

「そういえば…」

フミが言おうとしたことはなんだったのだろう。
ツカサは気にかけつつも、決戦に備えることにした。




―2013.6.15
 

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