プリムラ

□28.破軍を破る音色
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本局にて、ツカサとヤマト、そしてダイチとジュンゴはベネトナシュに関する資料を探していた。

「こっちの棚はアウト〜…それっぽいの無かった」
「そうか。ツカサ、そっちはどうだ」
「見つかりませんね…」
「ん、それでも頑張る」

そんな時、ウサミミがやって来る。

「ねえヤマト、トランペッター知らない?」
「!」
「なるほど、菅野か」

トランペッター、終末のラッパ吹き。
その音色は特殊な音波を持っており…ツカサにもウサミミの意図が分かった。

「トランペッターの音波でベネトナシュのハッキングを阻止するのか」
「そういうこと」
「なら早速行こうか」

ツカサはトランペッターの名前が出た時点から端末を操作し、封印されている場所を調べた。

「場所は東京、日比谷公園です」
「そうか。…これが解除コードだ」
「ありがとう」
「よっしゃ、これで勝てるんだよな?」

嬉しそうに笑うダイチを見てヤマトは息を吐く。

「問題点が一つある。トランペッターのラッパはベネトナシュだけに影響を及ぼすわけではない。…徐々に広範囲に広がって我々も悪魔が召喚できなくなる」
「…悪魔を呼んでからジャミングしても、その後悪魔は召喚できない…リスクが高いですね」
「まあそれでも使うよ」

ウサミミはひらひらと手を振った。
彼が言うと、何故か全員安心できた。
そのままウサミミはトランペッターの封印解除に行ってしまった。
ダイチたちも後を追って行ってしまう。

「今一度、自分の悪魔を確認しますね」

先ほどのこともあってか、2人きりが気恥ずかしい。
…それを汲むほどヤマトはお人よしではなかったが。

「逃がすとおもうか」
「あうっ!」

後ろ襟を掴まれて、ツカサがヤマトの方へ引き寄せられる。

「…逃がしてください…」
「そんな目で見られてもこちらは煽られるだけだが」
「そ、それじゃあベネトナシュを倒してからなら!それからなら!」

よっぽど気恥ずかしいのかツカサは若干涙目になっていた。
余計煽られる、とヤマトは思いつつもツカサを解放した。

「そうか、ではベネトナシュを早く倒そう」




赤坂、迎賓館


ウサミミからトランペッターの協力を取り付けたと連絡があり、ベネトナシュの反応を追ってツカサたちは現場に辿り着いた。
トランペッターと交渉時、フミが何かしたらしいが当のフミに聞いても「あれくらい普通普通」と言われただけで詳細は聞けなかった。

「頼む、トランペッター!」
「よかろう。盟約に従い、今汝の願いを叶えん」

トランペッターが息を吸い込み、軽快でいて荘厳な音色を奏でた。
周囲に音は響き渡り…そしてわかりづらいがベネトナシュの雰囲気が変わる。

「ハッキングの阻止成功!」

ツカサは喜び、携帯を構えた。

「今日が最後なんよね?ますます頑張らないかんな!」
「フッ…さっさと決着をつけるぞ」

ふと背中に寒気を感じたツカサだったが気にせず悪魔を召喚した。

「アリラト、カルティケーヤ!」

もうこれ以上悪魔を召喚することはできない。
それでも、やるしか道は無い。
トランペッターの奏でる音色を背に、彼らは攻撃を始めた。


ベネトナシュはそこに佇むだけではなく、メグレズの目を射出しては妨害してくる。

「はあっ!」
「援護します!」
「俺も!」

ツカサ、ヤマト、ウサミミで畳み掛けると何やら嫌な音がした。

ぐじゅっ、ぐじゅっ、ぐじゅっ

なんと彼らは4つに分裂した。
中身を見ると、今までに対峙したセプテントリオンも見える。
そして上空からアリオトの使ってきた毒素の塊が降ってきた。

「なるほど、7体目とあってなかなか強力ですね」
「ツカサー、援護するよ」

フミがまず中身がメグレズのベネトナシュに衝撃を浴びせた。

「どうも中身真っ黒いの以外なら人間の攻撃は効くみたい」

全員が携帯の画面を確認し、ベネトナシュたちのデータを見ると確かにそうだった。

「では先に、人の攻撃が効く個体から片付けます!」

ツカサのカルティケーヤ、ヤマトのレミエルが次に中身がアリオトの個体に攻撃する。
全員で倒し終えた後、残るは中身がベネトナシュである個体だけになった。

「あと一体、こうなったら全員の悪魔で総攻撃しよう!」

ウサミミの呼びかけに答えるように、全員の悪魔がベネトナシュを囲む。
そして各々の悪魔がそれぞれの攻撃を放った。
電撃、衝撃、火炎、氷結、万能。
多種多様な属性攻撃がベネトナシュを集中攻撃し……。
ついにベネトナシュが崩れ落ちた。



「やった…!」

ツカサの呟きが全員にも伝播する。
12人の悪魔使いたちはその場で歓声を上げた。

「北斗七星でなぞらえるなら今日が最後…ですよね」
「ああ、正しければポラリスへの道が開かれるというが…」

どうもそれらしい雰囲気はない。

「じゃあ、変化を探そうぜ!…それとさ、もうすぐ終わりだから悔いのないように、今日のうちにやれることはやって明日を迎えよう」

ダイチの提案に全員が頷いて、変化を探しつつ各自明日への準備を始めることにした。

「………。」

ツカサはヤマトからの視線を背に受けつつ、まずは自分のできることを始めようと思う。
冷や汗をかきつつ、ツカサは探しに出かけた。




―2013.6.18
 

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