プリムラ

□30.世界の行く末
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災厄の8日目、日曜日。災厄からちょうど1週間。
ツカサはいつも通りの時間に目が覚め、目をこすりながら隣を見た。
…ヤマトがいる。
一瞬驚きそうになったが、昨夜のことを思い出して微笑んだ。
ヤマトの寝顔を見て、その頭を撫でる。

「ん……」
「あ、ごめんなさい。起こしてしまいました」
「…構わん、おはよう」
「おはようございます」
「いよいよだな」
「…まずは朝食を食べましょうか、着替えてきますね」

ツカサはそう笑うといつもの服に着替えてヤマトの元へと戻る。
そして一緒に仲間たちの元へ向かった。



「おはようございます」
「お、ツカサちゃんに局長さん。朝からラブラブでうらやましいねぇ」

ジョーがにやにやと笑った。

しばらくして全員が集まり、
まずポラリスに会うのが先だが、ウサミミたちは昨夜ティコに世界の復元について聞いたらしい。
世界を復元させることは可能だが、もう一度同じことが起こる可能性があるし、何より記憶を保持したままだとデータがパンクして、彼らの存在が抹消される恐れもあるとティコは語ったようだ。

「…やはり難しいのですね」
「だが諦めるつもりはないのだろう?」
「はい」

仲間が考えてるとき、

「ちょっといい?」

ダイチが手を挙げた。

「…もともとこの災害ってポラリスが原因なんだよな?ならそいつに頭下げるってのもおかしい気がする。ポラリスさえいなかったら今頃俺ら普通だしさ」

それももっともな意見だったが、そう言ってからダイチは頭を抱える。

「あ、でも世界の管理者なんだよな…。仮に倒して世界がどうなるか分かんないし…」
「でも一つの選択肢やね」

ああだこうだと言い合っていたが、まずはポラリスへと繋がる手がかりを探すために一同は解散した。




「どう思う?」

ヤマトとツカサは一緒に行動していた。

「復元か、ポラリスを倒すか…ですか?」
「ああ。両方納得できるがリスクは大きい」

ツカサ自身は、もう答えは少し決まりかかっていた。

「…私は世界の復元に賭けたいです。私の人生は決して平凡なものではなかったけど、この災害を起こさずに済むのなら」
「存在が消える可能性があるが、いいのか?」
「だから賭けるんですよ」

ツカサは笑う。

「私は、…正直もう一度あの屑共に苛まれるのは吐き気がする、が。だが私たちならやれるかもしれないという気持ちもある。まだ迷っているよ」
「ヤマト様…」
「でも、決めるのはもともとこれを唱えていたお前たちだ。そして、結論を出すのはきっとウサミミだな」

やはりポラリスへの手がかりは見つからず、2人は一旦戻る。
そしてそこに全員が集まっていた。



「で、見つかった?」

フミが口火を切ると全員首を振った。

「…まだ何も起こらないとなると…何か残してるのかも」

残していること、ツカサは少し心当たりがあった。
憂う者のことである。あれから見たという報告は聞いていない。ヤマトが負けたことに安心してどこかへ消えてしまったのだろうか?

「そうそう、憂う者に会ったんだけど」

ウサミミがなんでもない風に言う。

「聞いてみたよ、世界の復元が可能なのかと。…やっぱり難しいらしい、でも俺たちには可能性があるから不可能では無いってさ。もし全てポラリスの裁定通りだったら俺らはとっくに滅んでいるわけだし」

それはその通りだった。
彼らは確かにここまで生き延びた。
悪魔に対抗し、セプテントリオンを退け、ここまで生き残った。



「だから…俺は世界の復元に賭けたい」



その言葉に、ダイチが率いてた東京勢―ヒナコ、ジュンゴ、ダイチ、そしてツカサも頷いた。

「だってウチらここまで生き延びたんやし、可能性あるもんな」
「みんな頑張る、きっと大丈夫」
「お、おう!ちょっと怖いけど…」
「…今度はこんな災害を起こさせない。私はそう決めたから」

「それなら俺は君たちの選択を尊重しよう」

ロナウドが笑うと全員同じ意見だったようだ、同じように頷いた。

「…よし、行こう。憂う者が俺たちの答えを待っているらしいから」




迎賓館


ベネトナシュを倒したそこに、憂う者がいた。

「やあ、…全員来たようだね」
「答えは決まったよ。…世界を復元させる」
「それに伴うリスクは理解の上、か」
「ああ」

全員が自分なりの決意を述べ、ツカサもそれに倣った。

「今日まで色々ありました。主に離反するという今までの自分じゃ考えられないこともやってのけました。…人は変われる、今度は間違えない!」
「君たちの決意が固いようで安心した」

憂う者が指を鳴らし、悪魔を召喚した。

「君たちの道のりは辛く険しい。…だからそれなりの力と覚悟があることを見せてもらう」
「殲滅すればいいのですね」
「ああ。…それでは、見守らせてもらう」


彼は空の彼方へ飛び、消えてしまった。


全員召喚アプリを起動して、悪魔たちへ挑む。
殺気を携えてツカサは笑う。

「それでは参りましょう」




「…素晴らしい、君たちがこの8日間で育んだ実力は本物だ」

悪魔を殲滅し終えると、憂う者が賞賛した。

「それでは、ポラリスへの道を教えてください」

ツカサが尋ねると彼は首を振る。

「まだだ。まだ君たちは全てのセプテントリオンを倒していない」
「ま、まだいるのかよ…」
「大丈夫、次で最後だ」

そして彼の顔が真顔になった。

「ただ、最後のセプテントリオンは手ごわい。全力で戦うといい」
「それはどこに…」
「その前に。おそらく君たちはポラリスのところへ行くためにターミナルを使うことになるだろう。ただ、今君たちの持つ端末はあまりにも脆弱でそこへ辿り着けない。…まずはターミナルを強化することだ」

彼は微笑む。

「本当にもう少しだよ…頑張って」




―2013.6.21

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