プリムラ

□32.明日への扉
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そこは幻想的な空間だった。
この世のどこでもない空間だった。
空には星のようなものが、線を描いて巡っていた。

「ここに、ポラリスが…」

ツカサが呟く。
不意に、中央にある円盤が浮いて、顔のようなものが出てきた。

「人間よ、よくぞ来たな。お前たちは試練を乗り越え、私の前までやってきた」

その者こそが、アカシック・レコードの管理者、ポラリス。
人間は滅ぶべきだと決定し、この災厄を引き起こした張本人。

「問おう。人間、お前たちは世界に、どのような姿を望むか」



「元に戻してくれ」



ウサミミの言葉に全員頷く。
続くようにダイチが紡ぐ。そして、ツカサも。

「そ…そうだよ!人間の世界はアンタにとっちゃワケ分かんねーかもしれないけど!俺たちは俺たちなりに生きてきて、あの世界があったんだ!」
「この8日間、色んなことがありました。各々学んだことは多々あります。それも生かして、今度こそ世界が前に進むよう頑張るつもりです」

「破壊前の世界を望むか。しかし世界や人間を上書きすれば、お前たちがどうなるか分からぬ」

「承知の上です…!私たちだって、もう前みたいに何も知らずに生きているわけじゃない!」

イオの言葉にポラリスが笑う。

「なるほど、望みは分かった。だが人間はすでに腐敗し、生きる価値を失った存在である。…お前たちならそれを正しい方向へと導けると?」

「生きる価値を失った…か。それには同感だ」

いつものようにヤマトは笑う。

「だが我々はここに辿り着いた。可能性が無いとは言い切れまい?」
「…そうか、なら何も言うまい。お前たちの覚悟が本物か…流されることなく大衆を導く力を持っているのか、試させてもらう」



そして、まるで体のパーツのようなものが現れる。
一つ一つ見ると奇妙な、白いものたち。

「え、これ戦う流れ!?」
「当然でしょう、セプテントリオンを全て倒しただけじゃポラリスのお眼鏡には適わないということです」

全員が携帯を構える。

「これで正真正銘、最後の戦いだ。…死ぬなよ、ツカサ」
「ええ。這いずっても生き残ります」

お互いに確認し合って、各々悪魔を召喚した。

「行くぞ!」

ウサミミの声に全員がポラリスへとかかった。




「…っ!」

あらゆる属性、万能属性までもが効きづらい。
そして圧倒的な攻撃回数で戦況は徐々に押されていく。

「…邪魔だな」

ヤマトは何を思ったのか、そこに浮いていた身体のパーツのようなものを破壊した。
直後、ポラリスに変化が訪れる。

「あれっ」

ダイチが拍子抜けた声を出す。
物理攻撃が通るようになっているのだ。
その変化に着目したのか、全員パーツを破壊した。

「これでどうだ!」

ロナウドが悪魔と共に火炎属性を叩き込む。
それはなんなく通り、ポラリスにダメージを与えた。

「なるほど、あれがポラリスを守護していたのか」

ヤマトが笑うと、ケルベロスと共にポラリスに挑んだ。
ツカサもそれに、ラクサーシャと共に加勢する。
ポラリスが反撃にと攻撃に出るが、守護を消滅させたからか、先ほどよりは効かず、これは反撃のチャンスだと全員に自覚させた。

ポラリスは焦ったのか守護を復活させるが、させた瞬間ジュンゴとケイタ、そしてオトメが殲滅させる。

「どうだポラリス、これが人間の力だ!」

ウサミミが万能属性の炎でポラリスを焼き尽くした。



そして、ポラリスは…消えない。
地響きが起こり、まるで空間が変わるような錯覚を彼らは覚えた。

「まだだ…こんなものでは世界を負うに足らぬ。さあ、次だ」

破壊したはずの守護のパーツたちがポラリスに集まる。
そしてそれはポラリスの体を形作るようになり、ポラリスと合体した。

辺りが暗くなる。
身体のような構造を手に入れたポラリスが、再び中央に降り立つ。

「…まだ本気じゃありませんでしたか」

ツカサは何が来るか警戒した。



「さあ…己の過去を見よ。本当に過ちを繰り返さぬか、問いかけてみるといい…」



そして、何者たちかが召喚される。
その姿に全員が驚いた。

「何、これ…」
「過去ってこれかよ…」

全員の前に、一人ずつ。
ツカサの前にも一人。



『本当に過去を変えようと思うのですか?そんな都合のいい奇跡なんて起こるはずない』



冷たく笑うそれは、ツカサ自身だった。
彼女は笑いながら攻撃する。

『無理よ!無理よ!あははははは!!!』
「…なるほど」

ツカサは悪魔を帰還させる。
ここは一人で己の影に勝つべきだ、そう思った。

「相手にとって不足無し、ですね」

そして一歩踏み出す。




―2013.6.23
 

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