プリムラ

□野次馬根性
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ウサミミの携帯がメールを受信する。
それはヤマトを説得しに行ったツカサからで、

『説得に成功しました!ヤマト様が雑務を片付けるそうなのでそれに付き合うために本局へ行ってきます』

喜びが伝わってくる文面がそこにあった。

「ウサミミ、どうした?」
「ツカサから。ヤマトの説得に成功したって。で、ヤマトが雑務片付けるらしいから手伝いに本局行ってくるってさ」
「うわ、ツカサすげぇ」

ダイチが驚いているとフミが何やらニヤニヤしている。

「どうしたフミ」

マコトの不審な視線に気付いたのかフミはあっけからんと言った。



「本局行ってくる」



全員がポカンと口を開く。
わけが分からないという全員の表情を見てから、フミは理由を説明することにしたのか口を開く。

「入局時から気になってたんだ、局長に『愛』って概念があるのかどうか」
「どういうこと?」
「文字通り。普段はどうか知らないけど、少なくともツカサに対してはあると思ってるんだよねー、比護欲とか独占欲とか?いい研究対象だ」

ふんふんと自分で頷くフミに対してウサミミたちも考え始める。
確かにヤマトはツカサに対する態度が他の誰とも違っていた。
当のツカサは気付いていたかどうかわからないが。

「で、ツカサは多分局長が自分のこと好きって自覚してない」
「ああ、ツカサちゃんならありうるわ」
「ちょっと聞き出そうと思ったんだけどね。自惚れになるからって言ってた」

女性陣にあー…という空気が流れる。
確かにその返し方はツカサらしいものだった。

「で、今局長とツカサが本局で2人きりなわけ。ちょうどツカサは説得できたみたいだしね、局長が何かアクション起こさないかなーって」

至極楽しそうなフミに一同は呆れつつも、中には興味が出てきた者もいた。

「それは気になるかも。いつも眉間に皺寄せてる局長さんどうするんだろうね〜」
「秋江…」

そんなジョーをたしなめるような目線をマコトは送ったものの当の本人は意に介していない。

「じゃあ気になる人は今から本局に行こうか」

フミの言葉にウサミミ、ダイチ、ヒナコ、ジョーが手を挙げた。
残る者の中には気になる人もいたようだが覗くようなことはしたくなかったらしい。
そんな中、



「迫っちが来るとは意外だね〜」



マコトは悩んだ末に本局へ覗きに行く組に加わった。

「…ベネトナシュがまだ残っている。局長が雑務をこなしているというなら私だって手伝った方が早いだろう」
「本音は?」

フミの表情はいつもと変わらない。

「それも本音だ。…もう一つある」

ターミナルを目指しつつマコトは話す。

「見届けたいんだ。私はジプスの中でも古株に位置する。2人のことはそれなりに見てきたつもりだ。…恋愛関係は正直分からないが、」

不意に彼女は目を伏せる。

「彼らが報われるというなら報われてほしいんだ。私たちは局長の野望を阻止した。もし局長にまだ願いがあるというのなら、それを叶えて欲しい」
「そしてツカサにも幸せになってほしいってこと?」
「そうだ。…彼女は私たちよりずっと長くあの方の傍にいる。本来なら志島や新田のように学校に通ってもよかったのに、だ。もし2人とも血に縛られているのなら、それから解放されてほしい」
「ふーん」

マコトの想いをその言葉で相槌を打ち、フミたち一同はターミナルへ着いた。

「ま、あたしも研究対象として見届けたいしね。さーてどうなるか」

大阪本局のコードが送信されて、一同は本局へと移動する。




そしてその結果、彼らはツカサのバイブ・カハに追われていた。

「こんなことになるだろうとは思ってたけど!」

ダイチは涙目で攻撃を躱す。
対してフミは満足気だった。

「いやー、いい観察結果だったよ。やっぱ愛って不思議だね」
「笑ってる場合か!」
「迫っちだって同罪だよ?」

「ま〜、めでたいってことで」

ジョーの言葉に一同は頷くが、直後衝撃属性の攻撃が飛んできた。
ウサミミは前に躍り出て言う。

「ここは俺が食い止める!」
「ウサミミ、それ死亡フラグ!」
「大丈夫だ、多分きっと帰ったら今度はヤマトが制裁用意してると思う」
「全然大丈夫じゃない!?」

てんやわんや騒ぎながらも、彼らは笑いながらターミナルへ走る。



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あとがき

27話の野次馬たちのお話。
アニメ版ノベルスでフミさんがヤマトに『愛』はあるのかということを呟いていたので、それならフミさんが野次馬提案しそうだなーと思いました。

それにしても、大団円後のフミさんはジプスにいるんだろうか…。それによってはED番外編書きやすさが違うんだけど…。




―2013.7.3
 

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