エーデルワイス

□2.再会と混乱と
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悪魔召喚アプリを通して召喚した悪魔は、ジプスの召喚システムで召喚した時より強い性能を発揮した。
加えてツカサ自身も悪魔のように特殊な攻撃ができるようになった。
いったいこのアプリの正体は何なのだろうと思いを巡らせるが、まずは消えたデネボラの捜索が先だ。
ツカサはそのまま東京中を練り歩くことにした。手掛かりがない以上、虱潰しに探すしかない。

街は混乱していた。
交通網が全て止められ、避難所もごった返している。加えて悪魔の目撃情報が人々の不安を加速させていた。
ニカイアは多くの人々に渡っていたとツカサは記憶している。
同じように悪魔召喚アプリが配布されているのだとしたら、悪用者が出てくることも視野に入れなければならない。
歩いても歩いてもデネボラは見つからず、また報告も上がらなかった。
夕方に差し掛かっても手掛かりはやはり見つからず、ツカサが途方に暮れていた時だった。

「あのっ!」

息を切らした女性がツカサに話しかけてくる。
顔が青く、何かに巻き込まれた様子だった。

「どうされました?」
「あっちの、避難所で、化け物を連れた奴らが!襲ってきて!」
「!」

早速召喚アプリ悪用者が出たようだ。
ここから近い避難所は仙草寺だ。今から走ればすぐに着く。

「わかりました!」

ツカサは急いで仙草寺に向かった。


ツカサが仙草寺に辿りつくと2手に分かれて争っている最中だった。
片方はいかにもチンピラという風貌な男たち。
そしてもう片方はアイヒナ☆☆の2人と、スカイタワーでぶつかった少女と一緒にいた少年2人だった。

「ツカサ!」

メイド服云々と言ってきた少年がツカサに気付いて声を上げた。
そしてアイヒナ☆☆たちや彼の友達も次々にツカサを呼ぶ。

「な、なんであなたたち私のことを……」
「思い出せ、一緒に戦った仲間だろ!」

戸惑うツカサの頭に突然映像が流れ込んできた。

世界の危機、セプテントリオン、悪魔使いの仲間たち、実力主義、共存、裏切り、そして選択。
回帰する直前の最愛の人からの言葉。


――何度巡っても私はお前を選ぶよ。……愛してる。


全て思い出した。


動かない彼女を目がけて悪魔が襲撃してくる。だが即座に衝撃波の嵐がそれらを葬った。

「お久しぶりです、皆さん」

ツカサはウサミミたちに笑いかけた。
記憶を取り戻した今、混乱する部分もある。だがしかし現在の優先事項はアプリ悪用者の粛清だ。

「さっさと片付けましょう」

ツカサが携帯を構え、悪魔が呼び出される。
後はそう時間はかからずに悪用者の携帯を没収し破壊できた。


「ツカサちゃん、メイド服ちゃうんやなあ」

戦いが終わり、再会を喜んでいるとふとヒナコがぽつりと言った。
スカイタワーで会った際のウサミミも同じことを言ってきた。
どうやら彼らにとってツカサのトレードマークはメイド服らしい。

「それは、この世界の私の事情によるところが大きいです」
「そうだ、聞きたいことあったんだ!」

ダイチがこれまでの経緯を説明した。マコトやオトメと既に再会していること、トリアングルムのこと、そしてこの世界に峰津院大和は存在しないこと。今の局長である峰津院都に後で面会する予定であること。
ツカサは前の世界の記憶と今の世界の記憶を比べ、目を伏せた。

「はい、確かにこの世界にヤマトさんはいません。どうしてかは、私にも。……でも、ミヤコさんは悪い人ではないですよ」
「そっか……」
「私たちはポラリスに勝利したはずなのに、またこういうことが起こるなんて……」

暗い雰囲気になりかけている時だった。
ぐっとアイリが拳を握って言う。

「でも、今は落ち込んでる場合じゃない!デネボラを止めなきゃ!またみんなで戦おうよ!」
「せやな!ちょっとウチら荷物まとめてくるから待っててな!」

アイリとヒナコはまず荷物をまとめに行った。


しばらくしてアイリたちが戻ってくる。
未だにデネボラ出現の報告は受けていない。早く探そう、という時だった。

「……にしてもウチら、急に回帰前の世界の事、思い出したな」

確かにそうだ。ツカサも先ほどの戦いで急に思い出したのだ。ダイチや他の面々もそんな感じらしい。
イオが言うには、思い出したきっかけはティコに生きるか死ぬか尋ねられて、その後に思い出したらしい。
つまりニカイアに生きる意志を示した時がイオやダイチの記憶が戻るきっかけだったようだ。
ヒナコやアイリたちは、先にニカイアとの契約は済ませていて、思い出したのはウサミミたちとここで戦った時だそうだ。
ただ、ウサミミたちにはツカサ同様、カラマチで出会ったようで、その時は何も思い出せなかったとのことだ。
それはツカサも同じだった。メイド服云々に戸惑うだけだった。
何故だろう、と考えているとイオが何か思いついたらしい。

「回帰前の世界の記憶を思い出すきっかけは、2つあるのかも。ニカイアに生きる意志を示すことと、前の世界で一緒に戦った人たちに出会うこと……」

確かに辻褄は合う。

「あれ?でもウサミミはそうなる前に思い出してたよな?」
「ようやく気付いたか」

得意げにウサミミは微笑む。彼だけ先に記憶を取り戻していたようだ。
それなら、ツカサに掛けた言葉も納得がいく。
もしかしたら彼は特別で、記憶を取り戻すにはニカイアに意志を示してウサミミに会うことが条件なのかもしれない。
それなら、仲間たちの記憶を取り戻すのは簡単そうだ。

「でしたら、ジプスでみなさんの居場所を調べましょう」
「うん、頼んだ。後はデネボラか……」
「狙いはスカイタワーです。一旦戻ってみましょうか」

消えたデネボラを追って、彼らはスカイタワーに向かうことにした。


―2016.5.30


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