エーデルワイス

□3.獅子奮迅
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スカイタワーに着く頃には日が落ちて暗くなっていた。
その時ツカサの無線に通信が入る。

『上空に磁場異常を確認!デネボラが砲撃体勢に入った模様!』

見上げるとデネボラの巨体がスカイタワーを覆っていた。
即座にツカサは無線に通信を返す。

「こちら明星、信頼できる戦力と共にデネボラを討ちます」

同時にウサミミの携帯に着信が入った。
現在一般の携帯に電波は入らない。着信が入る理由があるとすれば――
ウサミミは二言三言話して携帯をツカサに渡した。
相手はマコトだった。

『ツカサ、話したいことは山ほどあるが今はデネボラを頼む』
「わかりました、このまま現場に直行します」

電話を切り、携帯をウサミミに返すとツカサは戦闘に立って言う。

「では行きましょう。私が一緒なら通してもらえます」

スカイタワーに入る。ツカサを見てジプス局員は素直に通してくれた。
そしてそのままスカイタワー頂上に向かう道すがらでツカサはデネボラについて説明する。
上空に出現しているのはあくまでデネボラの砲台であり本体ではない。
本体はスカイタワー頂上に出現している。砲台ほどの巨体ではないが、これまでのセプテントリオンと同じく気の抜ける相手ではない。

「でも大丈夫です、私たちなら。何度も戦ってきたのですから」

頂上行きの特殊昇降器具前まで来た。先にウサミミが先行し、そのまま順番で頂上へと全員昇って行った。
デネボラ本体はそこにいた。すでにジプス局員が対処にあたっているがデネボラの攻撃でやられてしまった。
上空を見るとデネボラの砲台がまるで力を溜めているような動きをしている。
本体も新たな邪魔者に気付いたのか次々と悪魔を召喚した。
戦闘準備のためにツカサたちも悪魔を召喚して迎え撃つ。

「時間がありません、速やかに倒しましょう!」

デネボラ本体は3つの機関に分かれており、厄介なのは物理攻撃を吸収する盾部分だ。悠長に攻撃していると砲撃の危険性は高まる。
作戦としては雑魚悪魔を散らす組とデネボラへ攻撃する組の二手に分かれること。
前者はツカサを中心にヒナコとアイリ、後者はウサミミを中心にダイチとイオで突入することにした。

「わずらわしい……!」

ウサミミたちデネボラ攻撃組に襲いくる悪魔がツカサの悪魔、そしてツカサ自身の起こす炎によって屠られていく。
そしてヒナコたちも負けじと周りの悪魔を屠っていった。
すんなりとウサミミたちはデネボラへたどり着き、物理吸収部分を早々に倒してからデネボラ本体へ畳み掛ける。
前の世界での戦った経験が生きたのだろう、すぐに悲鳴のようなものを上げて本体が停止する。
砲撃部分はぐずぐずに消えて、崩れ落ちていく。その欠片は1つ残らず消え、地上に影響は出ないようだ。

「よっしゃ、トドメや……!ウサミミ!」
「あっ、待ってください!」

ツカサが声を上げ、そこにいる全員が怪訝な面持ちで彼女を見た時だった。

「……そこの者たち、退きなさい」

頂上に凛とした声が響く。
ジプス専用ヘリから誰かが降りてきた。
ヤマトに似た雰囲気の少女。彼女はデネボラに向けて、剣を抜いた。
突如デネボラの下から光が現れ、まるで網のようになってコーティングする。

「2000、デネボラを確保。直ちに搬送の準備を」
「ミヤコ局長……」

ツカサの呟きで、彼らはもう一度彼女を見た。
彼女がこの世界のジプス局長である峰津院都。

「無事、デネボラを仕留めたのですね」
「はい、彼らが……」

その時マコトがやってきた。ようやくこちら側に追いついたらしい。
ミヤコに気付くとマコトは口を開いた。

「局長、彼らが面会したいと言っていた者たちです」
「初めまして、若き悪魔使いの皆さん」

全員ミヤコに圧倒されていたが、やがてウサミミが口を開いた。

「女に転生した?」

そんなわけないでしょう。
ツカサはその場で転びたくなったがなんとか踏ん張りつつ彼らを見守る。

「君ってヤマト……峰津院大和と何か関係があったりする……?妹とか?」
「峰津院大和……?いえ、そのような名前は聞いた事がありませんが……」

そう言ったミヤコに、ツカサは違和感を覚えた。
最近は一緒にいることは少ないものの、幼い頃からミヤコと過ごす時間は多かった。
今の彼女は、嘘を吐いたように見える。
追及するにも今この場で行うより落ち着いてからの方がいい、そう考えてツカサは黙った。
ミヤコはデネボラの移送を行ってから支局へ向かうと言い残してヘリに乗り込む。
ツカサたちは先に東京支局へ戻ってミヤコを待つことにした。


―2016.5.30

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