いんぴに4
□ロイヤルヴィラB
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「お邪魔しまーす」
ソンギュが仕事帰りに寄るというから、焼酎とつまみを買って来て貰った。
こんなニートにも嫌味ひとつで多めに買ってきてくれるから、出来た恋人だと思う。
「え、そんな事言ったんですか?」
『ね?サイテーでしょ?こんな無害な人に家賃出せなんて』
「無害じゃないだろ。それに人でもないし。クローゼットに住んでるし、年に1回お供えしなきゃだし、お金かかんだろ」
ソンギュの呆れ顔はスルーしておいて、
本格的に面接の練習をする事にする。
「…ヒョン、試験通過した事ある?」
『ない…。ジンギは?』
「ない」
『最近の試験ってなにすんのかな』
「ソンギュどうだった?」
「え?えーっと英語のヒアリングがあったかな?うちの会社海外とも仕事してるし」
『英語かー』
「習わなきゃだな」
『でも月収なんて払えないだろ』
「あ!ねぇおばさん外国人幽霊の知り合いいないの?」
『お前バカな事言うなよ』
「連れて来たら家賃まけてあげるよ」
「…お前どこまでヒドイやつなんだ」
ヒョンからもソンギュからも「そもそも外国人の幽霊見た事あんのか?」「探すのも大変だろうが」ってお説教の嵐。
『…わかりました』
そう言ってクローゼットに消えたおばさん。
「本当に連れて来るのかな?」
酒に少し酔ったソンギュが凭れながら聞いてきて、そのまま押し倒そうとしたけどそうだ。ヒョンがいたんだった。ちくしょう。
『コックリさん、コックリさん…』
ヒョンとソンギュと3人で飲みなおしていると、クローゼットから不穏な呪文が聞こえてきた。コックリさんって…
「ジ、ジンギ…」
涙目で可愛いソンギュにグッと来たけど、早く見てきて!って背中を押されたからヒョンとクローゼットのドアを開けると、座って、ペンを握りしめて『コックリさん、コックリさん…』って呼び出してるおばさんが居た。
「おばさん…コックリさんで外国人幽霊呼ぶの?」
『はい』
『……』
「…よぉーし試験・面接練習は終わり!ソンギュの買ってきてくれたの食べようぜ」
「そ、そうだね。幽霊さんも一緒にどうですか?」
コックリさんなんかで呼べるハズもないとそうそうと見切りをつけたオレたちは、本格的に酒盛りに興じる事にした。
「そういえば、幽霊さんは幽霊になる前はなにをしてたんですか?」
「ソンギュ、そんなん聞いてどうすんのさ」
『歌手志望だったんです』
『歌手?!はぁーだから声おキレイなんですね!』
「…ヒョン、褒めすぎじゃない?」
「へぇ、オーディションとかしたんですか?」
『作曲家さんが私の歌を聴いたみたいで…オーディションを受ける様にと言われたんですが…オーディション前に…』
なにやらシンミリした空気に耐え切れなくなったヒョンが、おばさんに歌をお願いした事で、ココは急きょオーディション会場になった。
「なんでオーディション?」
「オーディションに未練があるようだから…」
「ジンギもたまには優しい所があるんだな」
「おい、オレをなんだと思ってるんだ」
「「ドSだろ!!」」
ようし、ヒョンはシめて、ソンギュは後でイヤだって位に抱いてやる!!
『さぁ〜緊張せずにリラックスして〜雰囲気5割、音5割でねぇ〜』
『(コクン)』
『では、はじめて下さい』
『で、でははじめます!』
マイクの代わりが焼酎の瓶っていうのが、またなんともいえないが。
ヒョンにソンギュにおばさんはいたって真剣。オレもヒザを抱えながら、せん越ながら審査員を務めよう。
軽快な音楽が鳴って、手拍子をしてあげるオレたち。
『あ〜、戸惑っちゃってwダンスしようと思ったのに〜!もう1度お願いします』
「久しぶりですもんね!」
『緊張しないで下さい!』
ヒョンとソンギュが緊張をほぐすように話しかけながら、また軽快な音楽が鳴って…
〜♪♪〜
『あ〜!もう1回!もう1回やらせて下さい!緊張しちゃって!』
「…ヒョン、なんであんなに下手なのに未練があるのかな?」
『うーん…』
『あぁ…シクシク…』
「あー、の、飲み直しします?そうしましょう!」
ソンギュが焼酎の瓶を開けて、おばさんに渡してその場はなんとかなった。
はー本当、こんなんでよく歌手になろうと思ったよね。
でも、なんでこんな無害そうなおばさんが殺されたんだろ。
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