えくそ本文
□傷口に砂糖を塗る
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「…ヒョン、」
「あぁ、…ジョンイナ…ゴメン…」
久しぶりに来たチャニョルヒョンの部屋は、
泥棒にでもあったかのような荒れようだった。
最近彼女さんと別れて、仕事にも身が入ってないみたいだって同期のセフンに聞いて半ば強引に家に来てみたらこんな状況だった。
流しには食器がそのまま。
ゴミ袋にはコンビニ弁当がたくさん。
洗濯物もそのまま洗濯カゴに。
「…ヒョン、オレ片づけますね?」
ソファーに座って天井を向いたまま動かないチャニョルヒョンの手を取ってそう言えば、
今オレの存在に気づいたようなヒョンの反応。
「そうだ、…ジョンイナ来ていたんだったな…コーヒーでも飲むか…ってあったけな…?」
あはは、と乾いた笑みを浮かべるヒョンを見ていられなくて、部屋を片付けにかかった。
ガタガタと動く洗濯機を見つめる。
チャニョルヒョンは、未だにソファーで朝ごはんにと出した食パンをモグモグと噛んでる。
冷蔵庫の中も何もなかったから買い物しなきゃ…
彼女さんと付き合ってる頃はこんなんじゃなかったのに…そんなに好きだったのか…
別れたと聞いた時は、「指輪返されちゃった」と笑っていたのに…あの時も空元気だったのかな…
乾燥機に入れていた洋服を畳んで、とりあえず部屋の隅に避難させる。
もぐもぐと食しながら、ボーとしてるヒョンに一応出かける事を告げて、近くのスーパーへ。
「ヒョン、作っても食べないかも…」
食パンでさえあんな感じなのだ。
スープ系がいいかなぁ?
買い物を終えて部屋に戻ると、バタバタとチャニョルヒョンが慌てた感じで玄関に走って来た。
「ヒョン?どうしたんですか?」
「ジョ、ジョンイナ…どこ行ってたの?」
「買い物ですけど…、?」
まさかヒョンの大切なものを捨ててしまったりしたのかと思い、スミマセンと口を開く前にヒョンに抱き締められた。
「ヒョ、ヒョン?!」
もぞもぞ動いて離れようとするけど、両手には買い物袋があって思うように動かせない。
「オレに愛想がついてどこか行っちゃったのかと思った…」
グスリ、と鼻をすする音が聞こえて、突然抱きついてくるからビックリしたけど、思わず笑みがこぼれる。
「ヒョン、そんな事ないから心配しないで」
「ジョンイナまで居なくなったら…オレ…っ」
腕が動かせないから、すり寄ってヒョンの頬にチュっとキスすると一瞬ビックリした顔をしたけどすぐに笑ってくれた。
「なに買って来たの?」
涙を拭いながらオレの手から買い物袋を取って、久しぶりの笑顔になったチャニョルヒョンにこっちまで嬉しくなる。
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