頂き物

□酸素を求める魚
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酸素を求める魚



あいつがいない。
ヌナからメイクをしてもらって、用意された椅子に腰掛けて気付いた。別に首輪を付けているわけではないし、恋人(まだ言うのも恥ずかしい)だから疑わない。
「ソンジョンは?」隣にいたホヤに聞けば「さっき何処か行きましたよ」と興味なさげに答えた。
「何処かって…」
「探したら?まだリハーサルまで時間あるし」
「うん、行ってくる」
ホヤが携帯から顔を上げて、手を振る。俺はそれに苦笑して返した。
うん、可愛い弟だ。
俺達の楽屋を出て、末っ子を探す。何時もなら気にしないのに。やっぱり恋人だから?
そこまで広い所じゃないから簡単に見つかった。
可愛い女の子に囲まれて、笑っているソンジョン。
「ソンジョンオッパー」
なんて珍しく年下の女の子に呼ばれて、満更でもない表情。やっぱり嬉しいのか、オッパって。
「あれ、ソンギュ」
「ひゃっ!」
「びっくりしすぎ」
クスクス笑ってるのは、同い年の友達のオニュ。そういえば一緒に出るんだった。新曲の衣装を見て思い出した。
俺は軽くオニュの肩を叩いた。にこー、と笑顔で返された。
「ソンギュヒョン!」女の子と別れたららしいソンジョンは俺に気付いて駆け寄る。可愛い、犬みたいだ。
「…とオニュ先輩」
「今、忘れてたでしょ」
「そんなわけないですよー」
仲良く話してる二人を見ながら、胸に違和感を覚えた。
あれ、なんでチクチクするの。

今、思い返したらソンジョンはメンバーに絡むことが多い気がした。特にミョンス。末っ子とリーダー、やっぱり難しいのかな。
「うー…」
分かんない、心臓が痛いのとか。チクチクして、苛つく自分が嫌だ。
自己嫌悪に陥っていると部屋から問題の末っ子が出てきた。
ぽたって落ちた雫。蛇口を捻ったみたいに涙が溢れた。
俺が泣いてるのをソンジョンはびっくりして、だけど背中を撫でてくれた。俺がヒョンなのに、迷惑かけちゃった。
「落ち着きました?」
「ん…ごめん…」
「良かった」
にこり、微笑んだソンジョン。俺の好きな表情。
「何で泣いてたんですか?」
「…っ!」言って、良いのか?ソンジョン絡みだった、なんて引かれるかな?怒られる?
「言って、ヒョン」耳元で囁くのはズルい。俺が耳、弱いの知っててやるから。
恐る恐る事実を話せば、きょとんとしたソンジョンは可笑しそうに笑った。
「ちょっ、何で笑って…!」
「可愛い、ヒョン」
「っ、は?」
「嫉妬、してくれるなんて」
「あ…!」
抱き着かれて、ソワァに押し倒された。逆になんか喜ばれた。よく分かんないけど、一件落着?
「ソンジョア…」
「なぁに、ヒョン」
「好きだから、嫉妬させないで…」チクチクするのは嫌だから。
「もぅ…」
「??」
「そんな可愛いこと言われたら、我慢出来ない」
「えっ、ちょっ…!」
服の中に手が入ってるんですけど。逃げようとしたら、にこりと笑って「さ、楽しみましょ」と言われた。
きゅんってする俺は病気なのかもしれない。だからソンジョア、治して。
お前しか治せないんだから。

おまけ
ソンジョンとオニュ。
キャラ崩壊注意!
「僕のヒョンですからね」
「ドヤ顔しないでよ」
「無理です、可愛いヒョンを自慢したくて堪らないので」
「うわぁ、愛されてるんだねぇ…」
「俺のお嫁さんですから!」
「なに、怖い!」
「結婚式ぐらいは呼んであげますよ」
「上から目線…仮にも先輩なんだけど…」
「あ、ソンギュヒョン」
「え、無視!?」




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