えくそ5
□72.失う
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「あれ?みんなどーしたの」
コンビニ行って帰ってくれば、
いつも楽しげな声が聞こえる宿舎が静まり返っている。
リビングへ行けば、ギョンスとベク。
「あ、チャニョルいい所に!」
「おかえり…よかったぁ」
「なに?」
あれ。と指を指したのはソファーで、
「ん…?ジョンイナがなに?寝てんの??」
「いや…泣いてんの」
「は、はぁ!?」
思わず大きな声を出せば、ふたりに口をふさがれた。
…よく届いたね…あ、スイマセン。
小声で状況説明をされて、笑ってしまったけど、ジョンイナはそれどころじゃないんだぞ!ってふたりに睨まれた。
「ジョンイナ、ただいま」
「うっ、…」
ソファーのクッションに顔を埋めて泣き続けるジョンイナの横に座るけど、顔を上げてくれない。
「ヒョンにおかえりは?」
「うくっ、…おかえ、りなさぃ」
「…ギョンスたちに話は聞いたけど、そんなに泣かなくても」
「だって!!!」
ようやっと顔を上げたジョンイナは、擦ったのか目元は痛々しく腫れてるし、鼻水も出てるしで汚い。
でも泣いてる理由が可愛すぎ。近くにあったティッシュで拭いてやってもすぐにポロポロ泣き出す。
「だって、ヨリヒョン、がっ!くれたのに」
「いつかは壊れちゃうものだよ?ちょっと早くなっただけでしょう?」
そんなに泣くなって
って、言うオレの言葉を無視して、今度はオレの胸でわんわん泣き始める。
うーん、どうすればいいんだろ。
ギョンスもベクも説得出来なくて困ってたし。こうゆう時に頼りになる長兄組もいないし、癒し組のレイヒョンもジョンデもいない。
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ガシャン、と音がしてキッチンに行けば、
割れたマグカップを囲むようにマンネ3人組が固まっていたそうだ。
そこから、ジョンイナはわんわん泣くし、
セフンとタオもつられて泣くしで宿舎は一時大変だったらしい。
ジュンミョニヒョンに慰められたセフンとタオの話で、ようやっとこのマンネ組大泣きの状況がわかったらしい。
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話を聞いて率直に思ったことは、
ジョンイナ、そんなに大切にしてくれてたんだなぁ…嬉しい!!だった。
でも、いつまでも可愛い笑顔のジョンイナの顔が見れないのはイヤだなぁ
「なぁ、ジョンイナ割れちゃったモノは仕方ないだろ」
「うぅ〜」
「今度ヒョンとマグ探し行こうぜ」
「うっ、…マグ探し?」
お、釣られた。
「お洒落な雑貨屋さんでもデパートでもさ、ヒョンと新しいマグ探しにデートしよう」
「マグ探し…デート…」
涙を拭ってやってキスをひとつすれば、ようやっと笑顔が戻った。
「ジョンイナ…」
じゃぁ今度の休みに行こうってようやっと機嫌が戻ったジョンイナと話をしていると、
涙声が聞こえて振り向けば目に薄ら涙を溜めているタオと大きな箱を抱えたセフン。
「ジョンイナ、あの…ごめん!!」
「ごめん…あんな狭い所で遊んじゃって…ジョンイナのマグカップ壊しちゃって…」
いまにも泣き出しそうなふたりの元へ行って、頭をポカンと叩いて「これでチャラな」って笑ったジョンイナ、可愛かった。
「ごめんね!!!これ、お詫びじゃないけどいやお詫びなんだけどさ、ジョンイナの好きそうなお菓子!!!」
「こんなのでごめんね」
「いいってば!…じゃぁみんなで食べよ?」
「「じょんいなぁー!!!」」
「おぃ…くる、くるしい…」
ジョンイナを両方から抱き締めて、結局は泣き出したダブルマンネ。
それをカラカラと微笑ましく見つめるオレたちなのでした。
「ヨリヒョンから貰ったマグカップがぁ!」