こばなし(その他)
□10.惚れる
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【10.惚れる】
あまりの痛さに思わずトイレの床に座り込んだ。
最悪…
目付きが悪い、はっきり喋ろ、色々難癖付けて来た先輩たちは、やり返してこないオレに普段のストレスをここぞとばかりに発散して行った。
「あれ…?どうしたの?具合悪いの?」
座り込んでボーと明日もこんな事されるのかな?って悲しくなってきていたら、トイレのドアが開いて同い年のハギョンが入ってきた。
同い年って言っても性格はオレとは正反対だから、あまり話した事はなかったけど。
具合が悪いと思ったのか、駆け寄って肩に手を置いて顔を覗き込まれた。
「いっ、!」
「え?!ゴ、ゴメン…え?な、殴られたの?」
さっきよりも心配そうな顔になったハギョンに痛みも忘れて笑ってしまうと、キョトンとして笑い出した。
「え?え??頭打った?」
「…ちがう」
「っていうか、誰にやられたの」
怒ったようなハギョンの顔。
はじめて見た。付き合いはなかったけど、こんな顔するんだ…いつも笑っていたから…。
「気にしないで」
「気にするよ!見ちゃったもん」
また他の練習生が来るかもしれないから、トイレから出る。というか、ハギョンから逃げる。
「待ってよ〜」
無視して痛い足を引きずりながら、個室に入るといつの間にか救急箱を持ったハギョンが後に続いて入ってきた。
「ほら、痛い所みせて?」
「…大丈夫…うっ!」
「痛いでしょ?ほら、見せて?」
肩をグッと押されて観念した。
手当したら出ていくだろう。後輩相手にも面倒見ているのはよく目にしていた。
「……ねぇ、ほんと誰にやられたの」
Tシャツを脱がされて、湿布を貼られる間ずっと同じ質問。
先輩に。って言ってハギョンが何をするのかわからないけど、言わない方がいいだろうと思ってずっと黙っていた。
はぁ…とため息をついてTシャツを着せられて、薬箱を片づけて立ちあがった。
「そこに湿布置いたから足とかのは、自分で貼ってね?」
「あ、りがとう」
ジッと見つめられて、?って思っていたらハギョンの顔が近づいてきて、頬っぺたにキスされた。
「なっ…ぃっ!」
「あぁ〜ダメだよムリしちゃ。ちゃんと湿布貼ってね?」
「な、!!!」
「じゃぁね、テグナまた明日〜」
ウィンクして出て行ったハギョンにワナワナしながらも、言いつけ通りに湿布を貼っていて気付いた。
「あれ、あいつオレの名前…知ってた」
まぁ、同じ練習生。
少ない同い年だし、会話らしい会話じゃなかったけど話した事あったし。
「さすが、面倒見いいな…」
******
「ハギョンヒョン、最近テグンヒョンと一緒にいますね」
「ん?うん仲良くなったの〜」
「あ、そういえばこの間先輩たち闇討ちにあったみたいですよ?」
「マジで?!こわ〜」
「あはは、悪い事でもしたから仕返しされたんじゃない?」
「え〜?まぁあの先輩たち威張ってばかりだったから、ざまぁみろだけど!」
「ふふ…あ!テグナ〜おはよう〜」
「…おはよう」
「ねぇねぇ、練習終わったらご飯食べに行かない?」
「行かない…行きたい所あるから」
「じゃぁ、オレもついて行っていい?」
「テグンヒョン、あんなに喋ってるの初めて聞いた…」
「本当に仲良くなったんだね〜なにきっかけだろう?」
「オレのテグンを傷つけるなんて、なに考えてんの?」